似ていない
新宿のフレンチレストランで娘にランチをご馳走してもらった。入口だけでなく、店内も趣があるというか古いというか…。しかし、この店の料理は二人とも大好きで、特に店で焼いているフランスパンは買って帰りたいくらい(買えない)美味しい。この日のランチメニューはたこを使ったサラダ、人参のポタージュ、メインディシュは肉料理か魚料理が選べ、デザートとコーヒーもついて1,680円。フランスパンはおかわりが自由である。 フロアマネージャーも古くからいる人で顔見知りであるが、娘が支払いをしようとすると私の顔をチラッと見て「いいお友達がいて幸せですね」という。なぜ年上の私が支払わないのかが不思議だといわんばかりの口ぶりだ。娘がすました顔で「母なんですよ」というと、慌てて「お若いものですから」と言い訳をしたが、誰でもが「娘と私は似ていない」という。おまけに年齢差は19歳だから仕方がない。そればかりか、息子ともまったく他人といってもいいほど似ていない。三人で暮らしていた頃は「これほど似ていない親子と兄妹もめずらしい」といわれていた。 私も娘も息子もフランクでオープンな性格であるから、自分の友人や仕事関係の人にでも平気で「母です」「娘です」「息子です」と紹介しあうのだが、相手に「嘘でしょう」「冗談はやめてよ」「信じられない」といわれることもしばしばである。時々、自分でも「なぜこんなに似ていないのか」不思議に思うこともある。ずいぶん前に病院で赤ん坊を取り違えた事件があったが、二度も続けて間違えるはずはないし…。しかし、娘と息子は「それはないと思うよ。なぜなら、一世代を超えて孫がそっくりだもの」とあまり嬉しくなさそうに言う。可愛そうな孫たちである。