秘密の場所
正月早々に、孫二人と一緒に美女谷温泉へ歩いて行ってきた。歩いたら1時間くらいの場所で、照手姫伝説の残る地なのだ。今は旅館は閉鎖されているという。少し前に近所の人と行ってみたが、もう少しというところで日が暮れてしまい、照手姫が髪を洗ったという滝を目前にして帰ってきていた。飴と小銭をポケットに、孫と話しながら歩いていると、人家の庭先の柿の木にサルが3匹いた。照手姫の木像のあるところから細い道を登り、3分も行かないところが行き止まりになっていて、ちょろちょろと水が流れているが滝らしきものは見当たらない。しかしそこから先は進めないので、「これが滝なんだね」と納得して帰ってきた。帰り道、「あれが滝?まるで爺さんのオシッコみたいじゃん」というと、中学生の孫に「ばば、お下品ですよ」とたしなめられ、「これは失礼、それでは言い直しましょう。まるで高齢者のお小水のようですね」と訂正したら、「それでは同じです」と大笑いになった。 翌日の散歩は一人でいつも行くところ。山道「自動車も通行可能)を歩いて片道約30分あまりの場所にある、落石のため通行不能になっていて、鉄パイプで道を遮っている(勝手に結界と言っている)所まで行った。その結界の少し手前で3人のおじさんとおばさんが話をしていた。通りかかると、一人のおじさんが「その通行止め先に素晴らしい景色の場所があるのを知ってる?」と訊いてきた。「あの先は行ったことがないので知りません」と答えると、「行ってみたいと思いませんか?」と、まるで井上陽水の「夢の中」のフレーズのような言葉が出てきたので思わず吹き出しそうになった。「僕は怪しいものではありません。この近所に住んでいる〇〇というものですが、その先に素晴らしい風景があるので、よかったら一緒に行ってみませんか」と誘われた。結界を超えて行ってみると、津久井湖に続く水門の光景が広がっていて、思わず「わぁ~」と声が出てしまった。これから先、芽吹きの春や紅葉の季節を想像するだけで楽しみが増えた気分である。 新年早々、新しい散歩道、素晴らしい風景に巡り合い、とても幸せな気分である。秘密の場所にしておきたいという気持ちが半分であるが、みんなに教えてあげたいという気持ちも半分はある。冬の寒さはこれからが本番かもしれないが。散歩道にはもう紅梅が咲きはじめた。春の気配を感じるこの季節が大好きなのである。