2度目の餅つき
新型コロナウイルスの感染拡大で世の中が右往左往している。幸いにも私が仕事で見回っている高齢者施設は、どこもインフルエンザ感染もなく、現場のスタッフの頑張りに頭が下がる思いがする。目に見えないウイルスとの戦いは防ぎようがないので恐ろしいと思う反面、人の少ない田舎で暮らす身にはまるで他人ごとのようにも思える。とはいえ、週に1度はラッシュに揉まれて都内へ仕事に行くので、最近はさすがの私もマスクを持ち歩いている。中国から帰国した人や、それを受け入れる施設や家族、医療現場の人等、関係者のことを考えるとため息が出そうだ。 4日前には雪が積もり、本格的な冬模様になったと思っていたらその後の大雨。翌日からは4月下旬並みのの温かい日が続き、なんだか体も心もついていけないような目まぐるしさである。 日曜日には知人の家で餅つきをするというので、明日から連日お手伝いに行かなければならない。昔はお正月を迎えるために餅つきをした。さらに2月頃には寒餅をついて薄く切って干し、一年中のおやつとして保存していた。先日、お年寄りと話をしたときに、昔は暖房がなくて寒かったねという話になった。「寒いときは火鉢に炭を入れて手を温めるだけだったね」、「火鉢に五徳を入れてその上に餅焼き網を載せて、薄い餅を焼いて食べるのがご馳走だったよ」と、話は大盛り上がり。今の子供は火鉢や五徳という言葉だけでなく、実際にそんな道具さえも見たことがないだろう。 餅つきの好きな知人は私と同年代である。年とともに昔味わったものが恋しくなるらしく、私から上の世代の人はほとんどが餅が好きである。そろそろ飲み込みが怪しくなる年齢なのではあるのが切ない。餅つきの前日にもち米を洗って浸けておき、餡子も手作りする。薪を燃やして餅米を蒸し、臼と杵で搗きあげる。スーパーでは年中パック包装の餅を売っているし、電動の餅つき機も市販されているこんなご時世に、なんて原始的なと思う反面、搗きたての温かい餅を食べるというのは何よりの贅沢なのかもしれないとも思う。幸いなことにお天気には恵まれそうである。もうひと頑張りしなくては…。