出張家政婦
孫の高校受験も目前に迫り、年度末が近くなって娘の仕事も忙しくなってきたので出張家政婦の要請が頻繁になって来た。塾へ行っているお兄ちゃんと仕事で遅くなる両親を小学生3年生の女の子ひとりで夜遅くまで待たせるのは可哀そうだ。バスと電車を乗り継ぎ、途中、吉祥寺で夕飯の買物をして杉並の娘の家に通うのもすっかり慣れてしまった。 夕食の準備をしていると「ただいま」と小学生の孫が帰ってくる。入学以来、学童クラブに行っているので帰ってくるのは5時過ぎである。「ばばが来てる時は、帰ってきたら家に明かりが灯っていてうれしい。それに好きなものを作ってくれるから美味しいご飯もあるし、一緒に遊べるし...」と泣かせることを言う。 いつもはひとりの食卓なので、みんなで揃って食べないとはいえ、5人分の食事作りは結構楽しいのである。小学生の孫と二人でおしゃべりをしながら夕飯を食べ終わると、近所に住む友達を誘って神田川沿いをウォーキングする。孫に宿題と時間割を確認し、お風呂に入れて歯磨きをさせ、時間があれば本を読んで寝かせる。まるでいっぱしの専業主婦のような母親ぶりである。自分の子どもを育てているときは、暮らしに追われてとてもこんな余裕などなかったが、この年になってこんな経験をするなんてと、感慨深いものがある。しかし、一緒に寝てはいられない。お兄ちゃんが帰ってきて、娘夫婦が帰ってくると食事の支度をして食べさせる。高校受験を目前にした孫の食べっぷりには惚れ惚れしてしまう。食べ終わると生意気にも「コーヒーないの?」と言う。どこまでも孫に甘い私は買ってきたお菓子を出して孫の話(ほとんどが理解不能)を聞きながら二人でコーヒーを飲む。 帰る前に「次は何を食べたい?」と聞いてみると、圧倒的に多いのが「ロールキャベツ」。面倒なのだが、喜ぶか見たくてせっせと作ってしまう。料理を作るのは、食べる人がいてこその喜びもある。しかし、3月にはほぼ進路が決定するので、それまでの出張家政婦なのである。それにしても息子のところの孫は元気でいるだろうか。気にかかる。試験が終わって春休みになったら、孫たちを連れて美味しいピザを食べに行こう。