久しぶり~
先日、杉並の娘の家にお手伝いに行った。お昼過ぎに到着し、孫娘が帰ってくる前に夕食の買い物をしようと近くのスーパーマーケットへ出かけた。前回来た時に「ハンバーグが食べたい」と言われていたので、メインの買い物はミンチ肉。他にもこまごまと買いたいものがあったし、そのスーパーは開店したばかりなので各食品の売り場探検もあって、あちこちうろうろとしてしまう。スーパーの探検はほんとうにおもしろい。カートを押しながら歩いていると、30年以上も前に勤めていた職場の人に出会った。その職場は以前私が住んでいたマンションからも、いま娘が住んでいる家からも歩いて行ける場所にあり、彼女も自転車通勤をしているくらいであったから近くに住んでいたのだろう。私がその職場を辞めてからも路上で行きあって挨拶を交わしたり、お祭りの広場で声をかけられたこともあった。結婚してからもずっと同じ職場で働き続けていた。年齢は私よりも10歳ほど若い。 私が田舎へ引っ越してから初めての出会いであったが、顔もスタイルも雰囲気もほとんど変わらず、白髪交じりのおかっぱ頭も昔のままで一目見ただけでわかった。お互いに「久しぶり~」とあいさつを交わし、近況報告をしあったのである。私は田舎暮らしの日常生活の話やジャム作りをしていると近況報告をしたが、彼女は「疲れたからすべてを放り出して、定年を待たずに仕事も辞めてしまい、今は専業主婦をしている」という。「今はな~んにもしていないのよ。主人の脛にかじりついて生きているだけ」とさばさばした口調でいう。臨床検査技師の資格を持ち、生真面目に黙々と働いていたという印象があったのでちょっと驚いた。 思わず、「いいわねェ、何もしなくても食べさせてくれるご主人がいて」と言ったら、「細いけど主人の脛にかじりついて老後の人生の消化試合をしているようなもの」と悟ったような顔をして笑っていた。残りの人生の消化試合って言葉は初めて耳にしたけど、どのような心持ちで暮らしているのだろう。私には理解できないが、反面うらやましい(?)ような気もする。長い間にいろいろなことがあったんだろうが、30年という年月は人を変えるには十分なのかもしれない。あの頃、一緒に働いていた人たちはどうしているのだろう。