カテゴリ:哲学・思想
アメリカを動かす思想 [ 小川仁志 ] 小川仁志「アメリカを動かす思想─プラグマティズム入門」(講談社現代新書) 2012年刊 1840年頃、アレクシス・ド・トクヴィルが見出したアメリカ人の哲学・・ 「自らの手で、自分自身の中にのみ事物の理由を求め、手段に拘泥せずに結果に向かい、 形式を超えて根底に迫る」。 これは、「プラグマティズム」と重なるもの。 ≪考えてみれば、何もない土地に入植してきた開拓民にとって、抽象的な概念や体系など 何の意味も持たなかったのでしょう。 大切なのは、生きるために結果を出すことだけだったのです。・・ その意味で、プラグマティズムは、アメリカという歴史のない特殊な国で生まれるべくして 生まれ、やがて思想としてまとめられ、いまなおDNA≫として息づいている。 最初にプラグマティズムを唱えたC・S・パース曰く、 「ある対象の概念を明晰にとらえようとするならば、その対象が、どんな効果を、 しかも行動に関係があるかもしれないと考えられるような効果をおよぼすと考えられるか、 ということをよく考察してみよ。そうすれば、こうした効果についての概念は、 その対象についての概念と一致する。」 このパースを批判的に継承した、ウィリアム・ジェイムズが主張した格率・・ 「ある対象に関するわれわれの思想を完全に明晰ならしめるためには、その対象がおよそ どれくらいの実際的な結果をもたらすか-その対象からわれわれはいかなる感動を期待できるか- いかなる反動をわれわれは覚悟しなければならぬか、ということをよく考えてみさえすればよい。 そこで、これらの結果がすぐに生ずるものであろうと、ずっと後に起こるものであろうと、 いずれにしてもこれらの結果についてわれわれのもつ概念こそ、 われわれにとっては、少なくともこの概念が積極的な意義を有するとする限り、 その対象についてのわれわれの概念の全体なのである。」 つまり、「対象の概念は結果次第だ」ということ。 1870年代、パースによって創始されたプラグマティズムは、 第二次大戦後、ヨーロッパの論理実証主義者による分析哲学がアメリカに入ってきて 一時期席巻するものの、21世紀に入っても、プラグマティズムは、依然アメリカ人の DNAとなっている。 パースから、ローティにいたる思想の概観・・ 1.有限の存在である私たちの意見あるいは信念は、つねに誤りをふくむものであることを みとめる可謬主義。 2.他の人の権利を侵害しない限り、すべての人の信じる権利をみとめる多元主義。 3.しかし、探求のかなたに実在をとらえることができるという実在仮説にもとづく、 探究ないし会話の継続。 つまり、知識と実践とを結びつけるのがプラグマティズムであるものの、 単に、知識を実践に結びつけても、すぐに正解はでない。 人間は間違いを犯すし、世の中には多様な考えがある。 だから、あきらめることなく探究を続けることが大切である。 <目次> 第1章 プラグマティズムの系譜 (アメリカ思想の系譜 パースの格率 ほか) 第2章 プラグマティズムの展開 (ネオ・プラグマティズムとローティ ブランダムとマクダウェル ほか) 第3章 アメリカ思想の上部下部構造 (リベラリズム デモクラシー ほか) 第4章 現実政治としてのリベラルと保守 (リベラルvs.保守 ティー・パーティー ほか) 第5章 イノベーション・プラグマティズムへ (ウォール街から官邸前へ 日本のプラグマティズム論 ほか) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.10.23 21:07:42
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