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2017.01.03
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カテゴリ:哲学・思想

岡本裕一朗「いま世界の哲学者が考えていること」




岡本裕一朗「いま世界の哲学者が考えていること」


 20世紀後半に起こった、人類史を決定的に展開させた2つの技術的な変化・・

 それは、BT(バイオテクノロジー)革命とIT革命である。


 まずは、IT革命についての考察から。


 
 「スマートフォンの存在論」・・

 かつてマーシャル・マクルーハンは「メディア論」において、

 書物の時代が終わり、映像や音声の時代になり、「書くことの時代」は終わった、といった。

 しかし、マウリツィオ・フェラーリスは、このマクルーハンの規定に意を唱え、

 「ドキュメント性」の概念を唱える。

 現代はむしろ、「書くことのブームへと向かっている」と考える。

≪「少しずつ、私たちは話すのをやめ、書き始めた。

 今や一日中書いている。」≫


 「ドキュメント性」の特徴には、以下の3つある。

 1.公共的なアクセス可能性

 2.消滅せずに生き残ること

 3.コピーを生み出せること


 「アラブの春」は、スマホで撮られた映像が全世界に拡散したことによって実現した。

 つまり、「IT革命が民主化を可能にした」ともみることができる。

 しかし、SNSは民主化のツールとだけみることはできない。

 民主化運動の中で撮影された映像は、同時に「監視の手段としても利用される」。

 
 私たちが日常的に利用している、各種カードやAmazon、Facebook、Googleなどの利用履歴は、

 日々、蓄積していく。

 その結果、「スーパー・パノプティコン」(ジェレミー・ベンサムが考案した

 監獄「パノプティコン」(一望監視施設))が出現する。

 かつての「パノプティコン」が、「監視する者」が向う側に控えており、

 「監視される者」は、個人的に特定され、その情報が蓄積された。

 それに対し、現代のデジタルな監視では、「監視される者」が誰であるかは問題にならず、

 「監視はいわば自動的に行われていく」。

 すなわち、私たちは「ITが生み出した自動監視社会」を生きることになる。 




 

 人工知能が人類にもたらすものは何か?


 チューリング・テスト・・人工知能が、人間のような知性(知能)を持っているか否かの判定を行う。


 しかし、チューリング・テストを超えても、人工知能には以下の課題がある。

 1つは、ジョン・サールの思考実験「中国語の部屋」。

 チューリング・テストは、問いの中身を理解しないまま、用意されたルール・ブックを基に回答

 するだけである。

 だから、チューリング・テストが完全にクリアできたとしても、コンピュータが人間のように心を持ち、

 理解することはできない。
 

 もう1つは、ダニエル・デネットが思考実験「フレーム問題」。

 人工知能が具体的な場面で行動を起こすときに、目的に関して関係のある結果と関係のない結果を、

 ロボットが見分けることはできない。
 
 ・・といいつつ、私たち自身、「フレーム問題」を解決してから、行動しているわけではない。

 もっといい加減なもの((+_+))



 
 レイ・カーツワイルは、「技術的特異点(シンギュラリティ)」という概念を提唱する。

 2045年には、人工知能が人間の知能を超える。

 その結果、アメリカの全雇用の47%がコンピュータによって失われる。

 
 ただし、「技術的失業」が起こったのは、歴史的に今回が初めてではない。

 19世紀初、「機械」によって、大量の失業が発生した。

 しかし、かつては「ルーティンな仕事」が奪われたのに対し、

 今回は、ホワイトカラーや医者・教師などにまで及ぶ。



 さらに、IoT(モノのインターネット)の導入により、「自律型の人工知能」は浸透する。
  
 その動向は、近代社会の未来に対して、アドルノとホルクハイマーが「啓蒙の弁証法」と名づけた

 世界が出現するのではないか。

「何故に人類は、真に人間的な状態に踏み入っていく代わりに、

 一種の新しい野蛮状態へと落ち込んでいくのか。」

 
 合理的な「啓蒙」が、やがて自分自身を否定するようになり、

 「反・啓蒙」である神話や暴力へと転化する。

 そんな世界が、「技術的特異点(シンギュラリティ)」の前後に出現するかもしれない(>_<)

 



<目次>
第1章 世界の哲学者は今、何を考えているのか
・ポストモダン以後、哲学はどこへ向かうのか
・「真理」はどこにも存在しない
・人間消滅以後の世界をどう理解するのか
・道徳を脳科学によって説明する

第2章 IT革命は人類に何をもたらすのか
・人類史を変える二つの革命
・スマートフォンの存在論
・シノプティコン――多数による少数の監視
・ビッグデータと人工知能ルネサンス
・人工知能によって啓蒙される人類?

第3章 バイオテクノロジーは「人間」をどこに導くのか
・「ポストヒューマン」誕生への道
・人間のゲノム編集はなにを意味するのか
・クローン人間の哲学
・不老不死になることは幸せなのか
・犯罪者には道徳ピルを飲ませる?

第4章 資本主義は21世紀でも通用するのか
・近代が終わっても資本主義は終わらない?
・格差は本当に悪なのか
・自由主義のパラドックス
・フィンテック革命と金融資本主義の未来
・グローバリゼーションのトリレンマ

第5章 人類が宗教を捨てることはありえないのか
・多文化主義から宗教的転回へ
・多文化主義モデルか、社会統合モデルか
・宗教を科学的に理解する?
・グールドの相互非干渉の原理
・創造説とネオ無神論

第6章 人類は地球を守らなくてはいけないのか
・経済活動と環境保護は対立しない?
・環境プラグマティズムは何を主張しているのか
・地球温暖化対策の優先順位は?
・終末論を超えて





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最終更新日  2017.01.03 19:38:29
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