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フライブルク日記

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2008/07/18
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テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:アウトドア

昨日まで数日間、友人がフランスのとある農村にもっている、いわば別荘の古い家で過ごしました。別荘というと聞こえはいいですが、この家は数百年もする、ちょっと廃墟を思わせる古い家屋です。村の教会の隣にあり、大昔は神父が住んでいたそうです。そのあと郵便局として使われ、家を入るとすぐ左手に郵便局の窓口がいまだにあります。友人がこの家を買ったときには、屋根はこわれ、床も天井もボロボロだったそうです。今では屋根はオレンジ色の瓦で葺かれていますが、あとはほとんど昔のまま。でも、昔のままだからこそロマンチックでもあります。床は幅の広い板張り、壁の板には優美な縁どりがされ、各部屋には暖炉があります(もちろんどこもかしこもはげたり、欠けたりしてますが)。

トイレと水道と電気はあるものの、浴室なし、電話・テレビ・インターネットすべてなしです(それでも、トイレに日本から買ってきたウオシュレットをとりつけたのと、庭に太陽熱で水をあたためるソーラーシャワーがあるので、ぜいたくさえ言わなければ、そしてお天気がよければ清潔に過ごすことができます)。

あるのは3000平方メートルの広い庭、その向こうに見えるなだらかな丘陵のすばらしい景色だけ。だから、この家にくると、日常の細々したことはすっかり忘れて、自然と向き合うことができるのです。

私がいつも感動するのは、この草ぼうぼうの庭で見られる自然の生命力のすごさです。

友人が買ったときには庭は一面に背の丈以上もある野生のブラックベリーでおおわれ、これをどけるだけでもたいへんだったそうです。今もブラックベリーやキヅタ、イラクサがどんどんのしていきます。そのほかにも、名の知れぬ、いわゆる「雑草」がさまざまな花を咲かせ、種を飛ばして自分の子孫を増やしていきます。敷石の隙間のちょっとした埃や土を利用して、クレッソンの仲間らしい小さな植物(形がクレッソンそっくりですが、葉の表面がちがう、でも食べてみるとクレッソンの味がします)やギシギシ(スイバ)がすくすく生えたり、石積みの壁の間からも花を咲かせる植物がいます。ライラックやヘーゼルナッツのような木ですら、雑草のごとく増えていきます。

このようなたくましい植物の間にあって、人間が「つくりだした」栽培植物である野菜、バラ、ラズベリーなどのベリー類は息もつけないほどで、ほっておけば姿を消してしまいます。栽培植物は人間の手助けなしでは、野生の植物には競争できないということを実感します。

ある程度はきれいに整った庭がほしい、美しいバラや果物やベリーのなる植物を育てたい、という友人は、まさに雑草との果てしない戦いをしているようなものです。私もバラが好きですし、西洋スグリやブラックカランとやキイチゴも食べたいのはもちろんで、この「にっくき」野草たちをやっきになって「退治」しますが、そんな自分が滑稽に思えてきます。自然の生命力に人間ごときが競争しようとするのが無駄なのだと。

そして、ちょっと土さえあれば、自然は回復し、みごとに繁茂してくれるのだとわかって、頼もしくも思えてきます。

東京などとくらべて寒いこの地でもそうなのですから、モンスーン気候で湿潤・温暖な日本の地方では、都市でも、人間がアスファルトやコンクリートで土をおおってしまわなければ、自然がどんどん回復するのだなと想像できて、ちょっと幸せな気持ちにもなります。

そうそう、動物もしたたかです。毎回、この家に行くたびに、キッチンや部屋のあちこちにネズミの糞らしきものが落ちていて、「すわっ、またしてもドブネズミかクマネズミに出会うのか」(またしてもというのは、マダガスカルのロッジで目を合わせてしまったからです、詳しくは拙著「励ます弁当」に書きました)と思いました。なにしろキッチンの床や部屋の壁にいかにもネズミのらしき穴があるのですから。穴をセメントでふさいだのに、そのとなりの木をまたかじって穴が広げられてしまいました。

ところがある日、庭に一匹のオオヤマネ(ヨーロッパに生息する、日本の天然記念物、二ホンヤマネよりも大きなヤマネ。でも、目が太いアイラインで縁取られているところは同じです)が死んでいました。その一週間後もやはり一匹の死骸が見つかりました。キッチンの床に広げられた穴を棒でふさいだのでヤマネ君たちは家に入れず、外をウロウロしていたところを、あたりを徘徊する三匹のネコにやられたようです。でもきっと(と私は内心信じているのですが)、別のヤマネがまたやってきて、知恵を働かせて家に入るにちがいありません。こちらも、その覚悟をして、この家にしばらく人が来ない場合には、食器などはすべて戸棚にしまい、ベッドやソファーはシートでカバーしなければなりません。

夜になると、隣の教会の塔にメンフクロウがとまって、ギャーギャーと鳴き、ナイチンゲールが美しい歌を聞かせてくれます。コウモリも飛んできます。

そして、この田舎町には近くに大きな町がなく、空気がきれいな上に夜の照明もないので、美しい星空が見られます。天の川がこんなにたくさんの星の集まりだなんて、東京はもちろん、フライブルクでも天の川を見たことはありません。

この田舎町は近所においしいレストランもなければ、とりたてて観光名所もないのですが、それだからこそ、なんでもない自然をこれほど楽しめ、心と体を少しは健康な状態に戻せるのだと思います。毎日、草刈や家なおしの数日でしたが、とても充実していました。






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Last updated  2008/07/20 07:49:11 PM
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