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テーマ:楽天写真館(354420)
カテゴリ:タコ生徒・学生期
二階に上がるとミラーボールが薄暗いライトに反射して濁った赤色を力なく放っている。
ジュークボックスでアメリカの「名前のない馬」をかけながら着替える。ワイシャツも黒のズボンも靴も高校時代のものだ。そして、店から借りた黒の超ネックタイをつける。 1973年の2月、池袋西口ロサ会館の横にあった小さなニューサカエという喫茶店でバイトを始めた。大学1年の春休みだった。 ♪ 砂漠で 名前のない馬に乗っている ♪ 中学3年が終わった春休みから、近くの教会に行き始めた。始まったばかの若い教会だった。大学生になった頃から教会の中の人間関係がぎくしゃくし始め、いろいろな事から逃げたくなり24時間営業のこの喫茶店で、世を忍ぶように働いていた。 目の前が、ロサ会館のエロ映画館。ガラス張りの店のカウンターに立つと外が良く見える。客のいないだらっとした時間に、ただぼーっとエロ映画館に吸い込まれていく人達を眺めていた。いっしょについていきたいなんて思いながら。 「米山さんはね、この店のマネージャー。でも、オーナーの女だから口のききかたとか気をつけないとね、タコ君。」 二つ年上で背の低さを少しでもカバーしようとしているかのようにオールバックに決めている富田さんが言った。米山さんは40歳くらいだろうか、黒い眼鏡をやや落としながら上目づかいにきつく話す人だった。笑ったことを見たことがなかった。いつも請求書の計算をしていた。私は挨拶だけだった。 富田さんはだいたい夜の11時くらいの出勤で、いつも近くのサウナに行ってからすっきりした顔で出勤してくる。私は、その少し後西武池袋線の最終に乗って帰宅していた。 「これから大島に旅に行ってくるわ。」 赤い布地のコートを着た好江がカウンターに座りながらぽろっと言った。前の年の12月に大学の体育の授業で知り合った好江は、いつもはぶすっとした感じだが、時々本当に楽しそうに笑う。その笑顔がいい。 仕事が終わると、また店の外に出て別の入り口から二階に上がり着替える。そして、また「名前のない馬」を聴きながら。気持ちも体も重くシャツがなかなか脱げなかったりする。 大学の授業にも身が入らず、だらっとした恋を引きづって、教会からも逃げながら、ずっとずっとこの池袋の砂漠で名前のない馬に乗って旅をしていたいような気持ちで毎日毎日当てもなく過ごしていた。 http://www.youtube.com/watch?v=mNyXFpsePTw&feature=related 毎回、果敢にこの緑の箱をクリックよろしくお願いいたします。 タコ社長の本業・オーストラリア留学 タコのツイッター Twitterブログパーツ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012年02月25日 20時02分12秒
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