テーマ:毎日、一歩一歩。(2526)
カテゴリ:ゆみのつぶやき
「・・・懐かしい声だなあ・・・」ときみがしみじみつぶやく。 ゆみはそのとき初めてきみのほうを見ることが出来た。 「三階の76番テーブルで先に始めてます。」 とメールをくれたのはいとこ君だった。 きみから連絡無いけれど、始めてるって事は、もうきみはそこに居るんだね。 あれから11ヶ月が過ぎた。きみに逢いたい、と言えばメールが来なくなる。 諦めてると、「三人で飲もうや」とメールが来る。三人でなら会えそうなきみ。 でも、それぞれ働き盛りで暇が無い。 もう期待しない癖がついてた。 あげたいものは、べつに急いであげたいわけじゃなかった。 だけど・・・きみのリクエストで描いたものだから、いつかはきみに受け取って欲しい。 きみの笑顔がいつかは見たい。 機会の無いまま、「次の誕生日になっちゃうよー」と催促してみたりした。 でも、逢えないことに慣れ始めても居た。 前回のプレゼントは、かつしちーさんのおうまカレンダー。 これもあげる前に、ずっとずっと時を待った。 出会った年のクリスマスプレゼントだったカレンダー。 あげられたのは去年の3月。5ヶ月ぶりの再会でした。 きみの笑顔で、幸せになれるゆみ。 きみの笑顔がちょっとまぶしいゆみ。 2005年の夏に奇跡の出会いをした、最高の友達。。。 階段を上がっていく。靴を脱いで板の間を歩き、奥の個室へ。 「ちょっとドキドキ!」ってメールしたことを後悔してた。 そういうのが嫌いなきみが、怒ってるかと思って、もっとドキドキ。 あ、いた。 格子戸越しに見えた横顔。 きみはおいしそうにビールを飲む。 正面には、いとこ君ご夫婦。今日は三人じゃなくて四人だ。 ゆみの席は当然、きみの隣。 「遅れてごめんね、お店閉めるときにお客さんが来てくれて、閉められなくて、 あ、あけましおめでとうございました。 去年はご無沙汰した上に、親戚じゅうびっくりさせてごめんなさい。 今日はよろしくお願いします。。。」 ゆみはただただ一気に自分のことをしゃべり続けて、いとこ君ばかり見ていた。 きみのあぐらの、ひざが横に当たってた。 友達にしては、狭い空間。 隣の人の顔は見えてなかった。 そこにやっときみのつぶやき。 そっか、ゆみの声、懐かしがってくれてるのか。 そっと見てみるきみは、相変わらずまつげをバサバサとさせながらの笑顔。変わらない。 「ゆみちゃんは何飲むの?」 みんなを見ればビールが三つ。 「いいよ。なんだって。」 傷心者のヤケ酒だもの、と思ったけど言わなかった。 「じゃ、中生でいいの?」 いいよ。 ・・・だけどそれも実は思い出の一品なんだよねぇ。 「食べてないんだ。」といとこ君に言う。ちょっと偵察。 日記は読んでいるのだろうか。 「そうなんだ。ここんとこ日記読んでないから、全然知らなかった。」といとこ君。 ん?どっち? ・・・そういうこと? 黒い焼き物のグラスに泡。 「かんぱーい!」 そうだ、みんな流しちゃえ、とゴクリ。 すきっ腹にビールの道が出来た。 「足崩していいかな」とゆみ。 掘りごたつな事に気づいていた。 「どうぞ。せっかく掘りごたつなんだから。」といとこ君。 「え?そうなの?」ときみ。あぐらの長い足を、やっと下に納める。 なんとなくほっとする二人。 やっと適度な距離感。 「お久しぶりです。」とゆみ。「ご無沙汰されました。」といらない一言。 「会社、早退してきたの?」ときみ。 なんだ?人の話全然聞いてない。 もしかして、緊張? 「あのね、聞いてよ。この人全然メールくれないんだよ。 だからゆみも、絶対しないようにしてたんだ。 なんか会話して、逢いたいねとか言うと、ぷっつり来なくなんの。」 「一ヶ月にいっぺんくらいは、メールしたでしょ。」ときみ。 「嘘。二ヶ月くらい音信普通だったよ。」とゆみ。 「えー?そうなの?ゆみちゃん。 俺たちなんか、2日にいっぺんはメール し合ってるよねー。 ・・・あれ?言っちゃいけなかった?」といとこ君。 「ずるーい!」 ほんとにずるいって言うか、いいなあって思った。 ゆみも男だったら良かった。そしたら気にせずもっと仲良くなれたのにね。 やっぱりきみと、わがいとこ君、親友なんだねー。 ここでちょっと解説。 「ゆみのつぶやき」に記されてる相手とやっと会いました。 その人は同い年のいとこの幼馴染で親友。 このいきさつをずっと一言日記で追ってたのが、ゆみのつぶやき。 この日記をHOMEから見ていただくと、左端に「カテゴリ」があります。 その中から、「ゆみのつぶやき」を選んでクリックすると、 出会いのいきさつも、きみの人柄も、ゆみの気持ちも、わかると思います。 このたび、ディープインパクトのレースの日の日記も、 ディープインパクトを描いた作品についての日記も、 このカテゴリに移動してきました。 繋げて読んで、二人が築いた「友情物語」をわかっていただけたら光栄です。 さて、いとこ君。ゆみと同じ年生まれ。(なので今回同席4人が同じ年の無礼講。) ゆみといとこ君たちのことは、何度か日記に書きました。 こんな感じの五人組で兄弟のように育ったゆみ。 新年の集まりも・・・夏の海辺も、いつも五人は一緒。お兄ちゃん、お姉ちゃん、それと三人組。 チビの三人は、同学年。筆頭はゆみ。弟分が二人。大切なゆみの友達。 隣り合ってるチビ助が、今回のいとこ君。 生まれたときから一緒、そして思春期にも仲良く、珍しい過ごし方をしたゆみたち。 大人になっても、会えばとりあえず昔の関係。よそよそしくない。 ゆみは二十歳のときに、親戚中をひっくり返した。 「お父さんが許しても、おじさんたちは許さないよ。」と言う過保護なおじ様の心配も 聞かずに、自分の道を進みました。 でもそのあとに、この一番生まれの遅い無鉄砲な男の子が、もっとすごいことに 突き進んでくれたので、ゆみは問題児じゃなくなった。 その後も彼は、独自の波乱の人生を歩んでくれちゃった愛すべきキャラ。 いろんなことをくぐり向けた彼は、いまや一番の大人なのかもしれない。 ゆみちゃんの日記を読んでてくれてる。 ゆみが教えたのだ。 親戚が読んでる、と意識したほうが、突拍子も無いこと、書かなくなるんじゃないか、 と思ったんだけど無駄だった。 ゆみのつぶやきは、開き直って載せてたし、たぶん他への想い(?)も読んでるだろう。 でも親戚としては、問題となるポイントが違うようだ。 「おじさん、手術だって?大丈夫なの?ゆみちゃん」とメールが来た。 家を壊した事件のときは、なんにも言ってこなかった。 あまりにもびっくりしたのか・・・ 今度はメールもゆみに来なくて、自分の目で確かめに来たらしい。夜中、車で。。。 そこまで来て、確認したなら寄ってくれたらいいのにー。 だけど確かめたその話は、回りまわって、違ういとこ君に怒られた。 写真で、帽子かぶっているちょっとおすましなおにいちゃんだ。 いとこの長としてゆみにお説教。 「ゆみちゃん、そういう時は言ってくれたら、出来ることもいっぱいあったのに。」 相談したって、どうにもならない状況だった。 実家の敷地を売ることになり、泣く泣く家を壊し、すっきりと何にも無くなった ことを日記に載せた。 その理由や、心の痛みは載せなかった。 今初めて語った真相。 話してる間中、きみは黙ってた。 ゆみはきみの方を一度も見ないで、一気に話し終わった。 「そっか、おじさんのガンの治療費がものすごくかかるんだと思ってた。」といとこ君。 きみは小さなため息を漏らした。 「ま、苦あれば、楽ありだな・・・」 「うん。うん。」ゆみは一息ついて、やっときみに向き合った。 思い出したようにきみがごそごそ動き出す。 コートのポケットに何か、入ってるらしい。 「んでさ、ずっとゆみさんに、悪いなと思っててさ、」ときみが言う。 「お詫びに今日、これやろうと思って持って来た。」 「はい、あげるよ。」 思わず手を出して受け取るゆみ。 「あ、これは・・・!!」 なぜ?と思うまもなくきみが言う。 「もうやめるんだ。乗れなくなっちゃったんだ。だから・・・持ってろ。」 「なんで?なんでやめちゃうの?忙しいの?」 両手のひらにのせられたものを見てゆみが聞く。これは必需品。 「腰痛めちゃったんだ。もう・・・無理なんだ。」 「え?足は?治った?手術した?」 「いや、まだ…してない。しないと治らないんだけどな。腰もなんだ。」 それできみは・・・大好きなものをもう出来なくなるの? もう乗らないの?きみの愛するものに。もう一生? そして・・・命みたいに大事なこれを、ゆみにくれようと用意してきたの? 感情が上がってきて、顔をくしゃくしゃにした。 今日はゆみがプレゼントをあげる日だったのに、こんなにも重い贈り物を ゆみがもらっていいんですか? 目からお水が流れようとするとき、きみが怒った。 「あ、そういうのなし!ストップ。そんならやらないぞ!!ゆみ」 そうだった。 きみはこういうのが一番嫌いだった。約束したはずだ。 二人は友達。 友達にはメロドラマはいらない... 涙はぐっと食い止めて、笑顔を作ってきみを見た。 「よし」ときみが言う。「いやあ、鞭とどっちにしようかと思ったんだけどさあ。」 「ちょっとつけてみ~?」 ゆみがつけたら、ぶかぶかだった。視界は黒くなって、両脇に小さくいっぱい開いた穴から、 いつもと違う世界が見えた。 こうやって、この視界から、きみは夢を追っていたのか。 馬上のきみは、何を考え、走っていたのだろう。 それがもう引退?乗れないって? そう思ったら、一瞬また涙がこみ上げてきて、きみが見れなくなった。 きみは・・・こんな大事なものを本当にゆみにくれると言うの? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年02月06日 06時14分40秒
コメント(0) | コメントを書く
[ゆみのつぶやき] カテゴリの最新記事
|
|