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カテゴリ:税理士の仕事
私達 税理士業務に携わるものとして、清算確定申告書だけはあまり書きたくないものです。
しかしみなさんご存知の通り、小規模零細企業である、従業員5人未満及び資本金が500万円未満の倒産件数が最近高率で推移しております。 日本の景気拡大を牽引している輸出企業の恩恵にあずかることのできない内需関連産業の小規模零細企業は、販売不振に追い込まれているのです。 バブル景気破綻時の大型倒産が沈静化する一方で、内需関連産業である建設業 小売業 不動産業等の小規模企業の倒産に歯止めがかかっておりません。 また 各種代理業や下請業者などの中間業者は、人件費や原材料費のコストが急増し収益を圧迫しているのです。 最近ある顧問先の社長より「会社を清算したいのですが」との相談を受けました。 彼は57歳のときに会社をリストラされてから、就職するか独立するか、考えた上での独立する道を選択しておりました。 あれから3年、還暦を迎えるに当たり、彼は「実は会社を閉めたいので」と相談しにやってきました。 いままでの経験を基に、会社をはじめたのは良かったのですが、あまりにもサラリーマン時代とは異なり、経営することの難しさをあらためて噛み締めておりました。 資金繰りに追われ、得意先には怒られ、下請け業者には馬鹿にされ、一人で全て背負い疲れ果てておりました。 退職金を殆どつぎ込んで、銀行借り入れはほぼ完済しておりましたので、何とか清算はできそうです。 救いを求めてくる顔。 苦渋に満ちている顔。 絶望の淵に立たされている顔。 決して 無声映画の中で大袈裟に演技しているのではありません。 税理士にならなかったら、こんなに悲惨な場面に立ち会わなくても良かったのにと思うこともあるのです 私の事務所には、これから厳しい冬を乗り切れるか、とても心配な小規模零細企業があります。 その会社は、銀行借り入れが多額に残っており、とても清算できる状態ではありません。 つまり 清算できるということは、まだ幸せなのです。 また 団塊世代の事業経営者の中で、事業の展望が開けないために後継者がいなく事業を継続することができなくなり、必然的に清算を余儀なくされるケースも増加してきそうです。 つまり これから 清算確定申告書を否応無しに書かざるえない状態が続くのではないかと思っています。 今まで何度が清算確定申告書を書いてはきましたが、今もって忘れられないのが、私が開業したてのころに、突然来所されて「会社を閉めたい」と言ってきた○○社でした。 私は言われるままに解散登記をし、言われるままに清算まで持って行きました。 そして さぁ 顧問料を請求しようとしたときは、影も形もありませんでした。 私がはじめて書いた清算確定申告書なのです。 清算確定申告書には苦い思い出がよみがえるのです。 安西節雄 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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