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支店長という肩書で、県内中小企業の多くの社長さんとの、出会いがありました。 本社に勤務しているだけでは、一流企業のサラリーマンが相手ですから、かような貴重な 経験をすることは、まずありえません。
大体、日本の企業数でいうと 99.4%が中小企業で、従業員数では 70%を占めます。出荷額では 50%といわれていますが、日本の経済を支えているのは まさに中小企業であることが、ここからもよくわかります。
お逢いした社長さんは、それぞれが一国一城の主。都会のサラリーマンであれば、 そのような話を聴く機会もないでしょう。
ある高級クラブで、お客様と飲んでた時、( 皇子はいつもように、黒ビール・・ いんやコカコーラ・・)ママが耳元で、
( あそこの席にいる、◎◎石油の社長がお呼びですが・・ )
◎◎石油とは、地元石油卸売会社として有名な企業で、名前だけは知っていました。 もともとは、しがない炭の行商人だったそうですが、これからの燃料は石油だと いち早く目をつけたそうです。そして、プロパンガスやガソリンスタンド経営に傾注し、 成功した新興財閥として有名でした。
( お~~、君があの有名な、悠愛か・・よく、取引先から、君の名前を聞くよ・・ まあ~~~、一杯飲めや!! ) と、レミーマルタンのブランデイーを。
( あの~~、わて不調法者で、酒が飲めないのですが・・ ) ( なに~~~、俺の酒が飲めない?! そんなら、何か芸が出来るのか? ) ( それでは・・ )
でたあ~~~!! 大ちゃん赤褌音頭。
七つ七クセ悪いクセ 八つやっぱりなおらない 九つ困ったすびばせ 十でとうとうずっこけた 大ちゃん ポッチョレ いい男 てん てん 天下のいなかっぺ
これが大いにうけ、後日会社へ挨拶に行くと、新規取引の話がとんとん拍子で まとまったのでした。 その後は何かと呼びだされ、夜の街を徘徊する仲になりましたが、ある時その クラブのママが社長に・・
( ねえ~~社長、聞いてくださいな。この前、磐梯熱海温泉に泊まった時に、 ヤクザにからまれたのよ・・ ) ( それで、どうした?? )
( あんまりしっつこいので、私がだれだか知ってて、からんでるわけえ~?! ◎◎社長の女なのよ、と啖呵を切ってしまったの・・したら、姐さんこれは、 失礼しました・って、尻尾を巻いて・・) ( おい、おい・・・俺の名前をやたらに、出すなよ・・ )
と、豪快に彼は笑い飛ばし、そして 急激に勢力を伸ばしてきただけに、闇の世界にも彼が通じていることを、 知らされたわけです。
お取引先で組織される会の会長は、皇子が支店長として着任する前から、 福島在鋼材問屋の社長さんでした。といっても、御年80歳を越えるおじいさん。 まさに好々爺という言葉が相応しい、いつもニコニコしている、いい人でした。
ゴルフが大好きで、会社を訪問した際には、まずゴルフの話から始まります。 ゴルフコンペに参加しても、なかなか優勝出来ない皇子。あるとき、冗談で 優勝カップが欲しいなあ~!!と言ったら、社長室に飾ってあるカップを くれたのです。 ( 今度は、自分の力でカップを、もぎとってごらん・・) と、言いながら・・
その年の、弊社取引先を招待してのゴルフコンペで、なんと皇子が優勝。 会長だった彼に、 ( 主催者の私めが、優勝するのはまずいのでは・・ ) と相談すると、 ( あはっ・・とれる時にもらわないと・・全然かまわないよ・・)
ご高齢だった彼は、ある時息子さんに、社長職を譲りました。 ところが、息子さんは不動産鑑定士の免許を持っていて、鋼材取引については 興味がわかないようでした。
取引先の決算書はもらっていますので、業績が悪化してきていることを、数字が 物語っていました。東北支社審査チームからは、取得済み担保額以下に同社との 取引額を、抑えるよう指示がありました。
会長にその旨赤裸々に説明し、会長も ( やはり、息子では無理なのかな?・・ ) と寂しそうにつぶやいたのでした。
ある晩会長から携帯に電話があり、明日破産の手続きにはいるけど、御社には 迷惑をかけないようにしてあるから・・ 翌日会社を見に行くと、債権者達が同社の在庫品をわれがちに競って、倉庫から 引き出しているのです・・・
弊社としては、会長のお詫びの通り、実損はありませんでした。 中小企業というのは同族経営だけに、老舗の会社でも経営を託された次世代 の能力次第では、このような結果になるということですね。
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