カテゴリ:日本経済
バブルを考える(72)
破綻認定 それにしても、長銀の破綻は不思議な破綻でした。前年11月の拓銀や山一の場合、市場で資金がとれなくなる資金繰り難による破綻でした。政争の道具になり、嵐に浮かぶ木の葉のように、ひたすら波の間の間に漂っていた長銀は、どうして資金繰りで破綻しなかったのでしょうか。 6月に住新との合併協議が発表され、その協議がどうやら暗礁に乗り上げたらしいと、市場が判断し始めた8月下旬以降は、到底通常の方法で、長銀が資金を調達刷る事は、困難でした。それなのに長銀は、資金繰り悪化で倒産する事はなかったのです。 何故か。日銀が長銀を支え続けたからです。政府が「長銀は債務超過ではない」と言い続けていましたから、日銀は破綻していない長銀が資金繰りで倒れた場合、長銀に対して無担保、無制限の特融を出し続けなければならなくなるからでした。 8月末以降の長銀は、日銀という人工呼吸機を装着したことで、辛うじて生き延びている重病人そのものだったのです。 金融再生法の成立をまっていたかのように、金融監督庁の長銀への立ち入り検査の結果が提出されました。それは、 1、98年3月期末時点では、貸借対照表上も、資産の部に計上されるべき金 額が、負債の部に計上されるべき金額を上回っていた。(3月は資産超 過だっったの意) 2、98年9月末については、6月末の資産査定を基準としつつ、9月末まで に発生した後発事象を加味した場合、要追加償却・引当額は7600億円と なった。 3、この結果、貸借対照表上は資産超過であるが、有価証券・動産・不動産 等を時価で評価した場合に生じてくる含み損益は5000億円のマイナスに なると見込まれる。 と、債務超過とも資産超過とも踏み込んでいない玉虫色の結論でした。お役所仕事の弱点がモロに出た内容だったのです。 佐々波委員会の資本注入を正当化するためには、3月末に債務超過だったというわけにいかないことは、誰の眼にも明らかでした。しかし、9月末については、何も遠慮は要らないはずでした。それなのに、9月末は、保有株式の含み損をカウントしなければ、僅かながら資産超過、カウントすれば債務超過とすることで、「長銀は債務超過ではない」と言い続けてきた政府の立場に配慮した内容になっていたのです。 大蔵省から独立したばかりの若い役所にも関わらず、まるで大蔵省銀行局のままのような結論でした。検査結果を受けて、金融監督庁の見解は割れ、官房長官の野中に意見を求めました。初代の金融担当相になる柳沢伯夫の就任は10月23日、その人事の発表は21日でしたから、なお担当大臣を官房長官が兼務していたのです。 幹部は含み損を勘案すれば、債務超過なので36条での破綻処理となり、含めなければ、37条での予防的な公的管理の適用になるが…と、説明すると、野中は明快に、これで行けと、36条を示したのでした。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.12.18 20:54:54
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