カテゴリ:日本経済
バブルを考える(75)
日本債権信用銀行…2 金融監督庁の通告を受けて、日債銀は猛烈に反発しました。前年春に奉加帳増資を受けた後、単独での生き残りは難しいと判断して、中央信託銀行との合併に望みをかけていたのです。 拓銀倒産を受け、拓銀の本州での店舗は、中央信託が引き継ぐことになったのですが、その引継ぎ後に日債銀とも合併する案を温めていたのです。しかし、長銀の場合の住信と同じく、中央信託もまた合併には慎重でした。身の丈に合わない不良債権を抱えたのでは、共倒れの危険があったからです。 慎重に調べてみると、合併行が引き受ける訳にいかない灰色債権が5千億円に上ることが,明らかになりました。日債銀側は自己に都合よく、「中央信託は、(5千億円の灰色債権を、日債銀が)時間をかけて処理すれば,合併しても良いと言っている」と理解していました。大蔵省も同じ立場でした。しかし、中央信託は、5千億円の灰色債権を、日債銀が自力で処理しない限り、合併合併に応じる気はありませんでした。 ここでもボタンは掛違っていたのです。日債銀の会長が大蔵OBの天下りの指定席で、この時も国税庁長官を勤めた窪田弘が、実力会長として日債銀に顔を利かせていただけに、ショックはより大きかったのです。 検査部の査定は、大蔵省の査定と整合しないとか、税効果を考えると黒字だとか、必死になって主張しました。しかし、税効果が発生するのは、黒字の企業に限ります。当期利益が多ければ多いほど、有税償却した不良債権のうち、実際に破綻した企業の分は無税となり、その分積み立てた税が、還付されるのです。将来の還付を見込んで、税効果分を資本に組み入れることを認めるというのが、欧米中心に広まった考え方でした。しかし、収益力のない日債銀に税効果が見込めるはずはなかったのです。 大蔵省は97年春の奉加帳増資に際し、3千億円もの資金協力を日銀と金融界に要請しただけに、それを無にする破綻認定は、行政への信頼を無にするのではないかと、抗議しました。しかし、監督庁は、それは大蔵の問題であって、金融監督庁には関係がないと、大蔵の抗議を切り捨てました。 ここから見える事は、金融検査や金融監督がなお大蔵省に残っていたとしたら、長銀の36条での処理や日債銀の破綻処理はありえなかったと思えることです。行政の無謬性神話にしがみつく事が、いかに日本の政治をダメにしているかが、ここから見えてきます。最もそうした官僚たちの思いあがりを許してきたのは、官僚をコントロールできない政治の責任ですから、最も大きな問題は、政治の資質ということになるのですが… 結局日債銀は、12月13日、金融再生法36条による特別公的管理を通告され、一時国有化されたのです。激動の2年間はこうして暮れました。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.12.21 19:07:38
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