カテゴリ:国際政治
イラン核合意(3)
EUを仲立ちにした間接的な接触の中で、バイデン政権の中東担当チームは、イランが核合意を完全に順守することが制裁解除の条件だとする従来の方針では、交渉を前に勧めることが出来ないことを悟ります。そして、そのまま物別れにしてしまっては、対イランの今にも切れてしまいそうなほそーい糸を、あの手この手を使って何とかつなぎとめていてくれたEU加盟国のメンツも、完全に潰してしまうこと、そしてそれはバイデン政権にとっても大きなマイナスとなることを理解します。 そしてもう一つ米国にとって重要なことは、6月で引退するロウハニ大統領の後任を選ぶ、イラン大統領選挙が6月に迫っている事実です。トランプの経済制裁を押し返せず、経済とりわけ失業に対するセーフティネットの構築に失敗したロウハニ大統領の経済失政に対する批判は強く、そこにコロナ対応のまずさが加わって、ロウハニ師に対する支持は、我らが菅首相や韓国の文大統領以上に低くなっています。その結果、昨年の議会選は、改革派の候補が立候補を拒否されたこともあって、若者の投票率が低く、結局低投票率が決め手となって、保守派の圧勝に終わったのです。 ということは、6月の大統領選までに、核合意について一定の成果を上げ、前大統領のアフマディネジャドのような保守強硬派でなく、少なくとも保守穏健派の候補に勝たせないことには、核合意への最終的な復帰は望めなくなってしまいます。 それは何としても避けたいのが米国の本音です。 こうして、現在の状況は、イランのザリーフ外相の方が、有利な立場に立ったと言えます。ザリーフの交渉力が強まったというわけです。 こういう状況の中で、米国チームは、制裁解除の条件を緩め、核合意の完全順守を事前に求めるのではなく、合意の順守についての「明確さ」を求めることで由としたのです。米側の譲歩を引き出したことで、ザリーフの政治力が強まり、次期大統領選へ出馬されると面倒だと考えた革命防衛隊の一部や保守強硬派が、ザリーフの追い落としを狙って彼の音声を暴露したという推論が成り立つ根拠がここにあります。 イランを孤立無援状態に置きたいイスラエルと保守強硬派のどちらにも、ザリーフ追い落としに強いシナジーがあることは事実なのです。 続 く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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