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HANNAのファンタジー気分

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October 26, 2005
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テーマ:本日の1冊(3686)
2005-10-26 22:32:37 やっぱり寝不足になってしまいました。荻原規子の小説は、読み出したらやめられません!
 孤独な笛吹きの若者と、天女のごとき舞姫。捕らえられた少年・源頼朝。まだ若き後白河法皇。そしてカラスの鳥彦王。登場人物が出そろったあたりで、結末がだいたい予想されるんですが、それでもやめられない。

 第一に、一見地味な主人公・草十郎の、魅力的な設定。

 生まれ:板東武者の父と、遊芸人の母。
 境遇:平治の乱で源義平に従い敗北。生きる道をなくす。
 才能:野山で笛を吹いては生き物を呼び寄せ、戦いでは音律を読んで相手を倒す、誰にも知られぬ音楽の天才。鳥彦王とも会話できる。
 性格:天涯孤独、まじめで朴訥、自分の才能に気づいていない。

 彼が独り野山で笛を吹く場面は、さほどきっちり語られているわけではありませんが、とても印象的です。ギリシア神話のオルフェウスみたい(この世から失われた愛する女性を取り戻そうとするあたりも、ちょっと似ています)。
 そして、思い出したのが、三十年ほど前のNHK大河ドラマ「風と雲と虹と」で草刈雅雄の演じた(この時がデビュー)、超かっこいい漂泊の笛吹き、鹿島玄明。時代はちょっとずれるけど、板東だし、笛吹きだし、何となく近寄りがたい雰囲気は、まさに草十郎。

 対するヒロインは、これまた天才的舞姫、糸世。天女のような清らかさなのに、中味はわりと普通の、活発でおしゃべりで多感な女の子。荻原規子おなじみの、というか、昨今のファンタジーに共通する、元気なヒロインです。

 時代が平安末期までくだったせいか、これまでの勾玉三部作に比べて、自然や神々との交感や、能力者・人外の者たちの援助は少ない(鳥彦王はいるけど)のが、個人的にはさびしいです(代わりに人間、たとえば幸徳などがここぞという時は援けてくれるのですが、人間なのでちょっとご都合主義っぽい)。
 が、糸世と草十郎の舞と笛が合わさる場面、天から花が降ったり、金色の光の糸が見えたり、そのこの世ならぬ異空間の描写は、人間くさい歴史物の中でいっそう輝きを放って、すばらしいと思いました。

 二人の恋も純粋で一途ですてきなのですが、彼らが源頼朝や後白河法皇の運命を変え、ひいては歴史を動かした、という筋立てが、「その時、歴史が動いた」(NHK番組)みたいで、見事です。





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Last updated  October 26, 2005 10:34:10 PM
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