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カテゴリ:お気に入りコミックス・アニメ
『火星年代記』『星の帆船』に続いて、気分はもう火星特集。
…長いあいだ火星は犯罪者の流刑星だった …地球人に支配されるのをきらった火星人たちは戦い …いまだ ゲリラ戦を続けているという …よく名づけたものだ…火星(マース) 火の星…戦いの星…わざわいの星――と ――『スター・レッド』 たぶんブラッドベリの遠いエコーもあるのでしょう、黙示録的で切ない火星の物語といえば、もはや古典のこのコミックス。 ブラッドベリの『火星年代記』が、タイトルの表すように広い視野で淡々と描かれた黙示録とすれば、『スター・レッド』はレッド・星(セイ)と呼ばれる一人の少女の、生きる(=自己を確立する=大人になる)ための悩みや戦いを、熱く描いたものだといえるでしょう。 セイは十五歳。大人になろうともがき始める年頃です。 冒頭の彼女は、未来都市の夜を疾走するバイク乗りのリーダーで、並みいる男どもをものともせず、ケンカでも精神的にも無敵の強さを誇っています。この年代の少女だけが持つ、怖いもの知らずの純粋な美しさ。 そこへ、彼女の秘密(火星人であること)を見抜く、見知らぬ青年エルグが登場します。並みいる男友達とはまったく異質の、文字通りエイリアンであるエルグの出現で、セイの強さはぐらつき、不安と孤独に駆られるのです。 地球で育てられたけれど、故郷の火星を恋い慕うセイは、エルグに連れられて火星へゆき、同胞・火星人との再会を果たします。 地球人に追われた火星人たちは、辺境の砂漠地帯で、古代人のような生活をしています。シルクロード風の砂漠生活や、ケルトのドルイド(僧侶または魔法使い)に似た、杖を持つ「夢見たち」など、魅力的です。 ほかに面白いと思うのは、彼らの名前に、鳥を思わせるものが多いことです。シラサギ、ヨダカ、黒羽(クロバ)…、火星には鳥などいないでしょうに。 ユング心理学では、鳥は魂や精神の象徴としてよく現れるのだそうです。テレパシーを使う火星人たちには、鳥の名がふさわしいのでしょうか。 この物語は、SF的、哲学的、またジェンダーの問題(火星人の男女差はあいまいです。クロバは女性なのに男性的戦士だし、ヨダカは男性から女性になります)など、いろんなテーマをふくんでいて、とても私には語り尽くせない感がありますが、少女セイの大人への試練(イニシエーション)と、火星という一つの惑星の運命とが、次第にぴったりと重なってきます。 そして…、だから、切なく悲しいのです。火星は砕けてしまいます。セイの恋いこがれた赤い星は、なくなってしまうのです。 そして、少女セイも(この時点では)大人の女性になることができませんでした。彼女を愛したエルグの呼び声にこたえようとした時、彼女のからだはもうなかったのです。この意味では、セイはイニシエーションで失われたのです、火星のように。 セイの命は女性になったヨダカの胎内で、赤ん坊として再生することになります。火星と同様に滅ぼされた惑星ネクラ・パスタに、再生の兆しが見えたように。 けれどそれはまた別の物語。 最後の場面で、生まれ変わった子供のセイを抱きながら、火星を悼むサンシャイン(陽一)の姿が、切ないです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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このお話も、もう古典なんですね・・・
結構繰り返し読みました。 子供にはちょっと難しかったかもしれない・・・と、今ごろ思っちゃいました。 (November 4, 2005 09:31:59 PM)
CRALAさま
>子供にはちょっと難しかったかもしれない・・・と、今ごろ思っちゃいました。 同感です。初めて読んだ中学生の時、後半はワケが分からず、またどうしても結末に納得がいかず、何度も読み返しました。 するとSF好きの友人が、「この結末は、これでいいのよ。これが、いい終わり方なの」というような発言をしたので、ますます分からなくなって、悩みました。 うーん、SFってむずかしい。 (November 4, 2005 09:52:59 PM) |