|
テーマ:近代建築散歩(107)
カテゴリ:和風建築
2022/01/12/水曜日/穏やかでも空気が冷たい
「ぐるっとパス」を12月末に購入したらオミクロン株急蔓延。少しでも行ける内に足を運ぶ。 林芙美子といえば放浪記、のイメージで建築とはおよそ結び付かなかった。しかし家の普請に当たり200冊からの住宅関係書を買い込み、研究し、大工連れで京都の見学までしている。求道心の塊のような方である。 「生涯住む家を作るなら、何よりもまず愛らしく美しい住宅を作りたい」と多忙な流行作家の傍ら、昭和16年の夏に竣工させた。 この住宅には武張ったところも権威的なところもない。水回りと茶の間に最大予算をさいた、まさに芙美子という人間の見える住宅だ。 浴室西壁一杯の引違い窓からは寝室とアトリエのある棟の前に植えられたカエデのイチギョウジとオオサカヅキが西陽に照らされ臨める。 オレンジと真紅の紅葉が並んだ美しさは例えようがないとか。 茶の間の東奥には母のための四畳半がある。すっきりとした狭さを感じさせない内装。こういう部屋を見ると半間でも床の間があるとよいなあ、と思う。 玄関アプローチの床石、カマチの踏み石、床の黒曜石、また隣接の客間の意匠は数寄屋風で、作家の住宅らしい格調がある。プライベートな空間のほのぼのとした柔らかさと好対照 作家の書斎。ずっと正座で書き続けられる、なんていうことに感嘆する。雪見障子で光をコントロール、裏庭の見える廊下に面した障子戸の内法の低さが美しい。正座から見た内寸法だろうか。 右上の照明は書庫の天井灯。当初からのものはこれとアトリエの天井灯だけだそう。 また画像で判然としないけれど、外壁テクスチャーに独特のさびた味わいがあると思っていたら、お醤油に漬けた鉄屑を漆喰に混ぜて仕上げたものという。昔からある技法らしい。 この季節、さっぱり花はない。けれど小さな案内板を見ると今では個人の住宅で見られなくなったものが並び植えられ、その季節が待ち遠しい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.01.13 07:34:55
コメント(0) | コメントを書く |