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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2012.10.30
XML
カテゴリ:東日本大震災
前回の記事の続きです。
前回はこちら↓

http://plaza.rakuten.co.jp/yyy0801/diary/201210270000/

この記事を見た法テラス福島の加畑貴義弁護士が、福島で、日々法律相談をしている立場から生々しい報告を寄せてくれた。
私としてもADRに対する絶望感がここまで達しているという認識がなかったので、非常に衝撃を受けた。現場の危機感を発信し、今すぐできることが何か、及ばずながら考えているところである。

最前線の現場において被害者の置かれている現状をよく知り、被害者の声を代弁する立場で活動されている加畑さんの報告はとても重い。
一人でも多くの方に知って頂きたく、加畑さんの許可を頂き、以下ご紹介する。


法律相談に入りながら感じていることですが、避難区域内の方々でADRを申し立てようとする方が、以前に比べ、相当減ったように感じます。法律相談で私がADRの話を持ち出すと、途端にガッカリされる方が、非常に多いです。その理由としては、1ADRの結論が出るのが極めて遅いこと、2ADRを申し立てると東電からの賠償が一時中断すること、が挙げられると思います。

紛争解決センターにADRを申し立てると、東電はADRの結論が出るまでその方に対する慰謝料等の賠償手続を中断します。東電からの賠償以外に収入源のない被害者の方は、ADRを申し立てた途端に生活が苦しくなります。避難区域から着の身着のままで逃げてきた被害者の方は、避難先で、まだ仕事先が見つからない方もたくさんいます。

ADRの結論が出るのが、当初の目標のように3カ月程で出るのであれば、まだ耐えることもできるでしょうが、最低でも半年以上はかかる現状では、被害者の方の生活は持ちこたえられなくなります。

これはまさに「兵糧攻め」なのです。

東電はそれを見越して、電話や相談窓口で不満を述べられる被害者の方に、「では、紛争解決センターにADRを申し立てて下さい」とそっけなく言います。その言葉の裏側には「お前の生活、ADRで結論が出るまで持ちこたえられるの?だったら、我々の言うままの額で我慢しな」という脅迫さえ感じられます。

したがって、法律相談に来られる相談者の方の多くは、すでに一度東電に直接抗議し、「紛争解決センターにADRを申し立てて下さい」と言われているのです。紛争解決センターが使いにくいという話は、福島でも新聞等でガンガン報道されており、すでに常識になりつつあります。
途方にくれた方が、法律相談にやってきます。

しかし、弁護士も妙案があるわけではありません。相当程度時間がかかると思われる「訴訟」という手段を除くと、現状、東電と争うために残された手段は、やはり紛争解決センターへのADRの申立ということになります。弁護士も、ADRの話を出さざるを得ないのです。

なので、弁護士が「ADR申し立ててみますか」というお話をすると、被害者の方は、「ああ、東電と言ってることが変わらない」と、ガッカリされるのです。

では、避難区域外(自主的避難等対象区域等)の方々のADRの申立はどのような状況かと言うと、やはり申立に対する意欲は失われつつあるように私は感じます。

たとえば、私が現在住んでいる福島市は郡山市や二本松市等と多くの市町村とともに、中間指針追補により自主的避難等対象区域という区域に指定されています。福島市は、原発爆発事故直後の風の影響により、大量の放射性物質に汚染され、空間線量につき毎時20マイクロシーベルトを超えたところもありました。
現在も高線量と言って全く過言ではない地域です。

しかし、自主的避難等対象区域の賠償は、成人(妊婦の方を除く)一人8万円、妊婦の方と子ども一人40万円(一時避難をされた方は60万)という額で、この額が一括で一回だけ東電から支払われます。現在、私のマンションの近くの空間線量で、毎時0.4~0.5マイクロシーベルトくらいの値はあります。これが地表になると、毎時5、6マイクロシーベルトくらいには普通に跳ね上がります。去年の3月から、この高線量の中で福島市民は生活してきました。原発事故から20カ月が過ぎました。成人に対する、1カ月の賠償は、単純に8万円を20で割って、4000円です。

自主的避難等対象区域の賠償が始まった直後、すなわち今年の初春頃の法律相談では、「こんな慰謝料は納得いかない」「毎年、福島に遊びに来てくれていた孫に、「もう行けないから」と言われてしまった」「公園で子どもを遊ばせることもできない」「裏山の果実が全て食べられなくなった」「ペットを(地表の線量が高いので)外で遊ばせることができなくなり、ストレスで死んでしまった。許せない」等という相談にあふれていました。皆さんADRに申し立てて争うことに意欲的でした。

この方々の多くは、ADRの申し立てをされたのではないかと思います。私が受任した方もいらっしゃいます。

しかし、最近の法律相談では、このような方々はめっきり少なくなってしましました。
その理由は、紛争解決センターが自主的避難等対象区域の方々の慰謝料について、現時点でしっかりとした新たな基準を作りだそうとする姿勢を見せていないからです。すなわち、中間指針追補で定められた8万円、40万円という基準を超える賠償を認定することに二の足を踏んでいるのです。不勉強であったら申し訳ないのですが、私は、現在まで自主的避難等対象区域の慰謝料(実費ではない)について、紛争解決センターが追補の基準を超える和解案を提案した例を1件も知りません。


現場からの発信を受けて心が震えた。
自分はなんと想像力に欠けていたのかと。

特に、「東電からの賠償以外に収入源のない被害者の方」の置かれた状況をこれまで具体的に想像することができていなかったことは痛恨の極みである。
現在、原発事故損害賠償関連で受任している案件は、すべて、静岡への避難者からの依頼によるもので、現段階で無収入とか、親族の援助を受けられないという方はいなかった。

そのため、文字通りの兵糧攻めを受けている方にとって、ADRがむしろ命綱の収入を切る役割を果たしてしまっているという事実を、今回初めて知った。

また、当初、怒りと悲しみを原動力に権利主張されようとしていたいわゆる区域外の方々の心をADRが折ってしまっているという現状にもやりきれない思いで一杯になった。

とはいえ、衝撃を受けた、やりきれないと言っているだけでは、職務放棄だ。
私なりに思いつく改善策を考えてみた。


1,内払いの和解契約を徹底する

まず、ADR申立=兵糧攻めとなっている現状は、最優先で改善しなければならない。
東電が、最低限の慰謝料を自主的にでも払ってくれれば良いのだがそれが期待できないのであれば、ADR申立と同時に、内払いの申立をするほかない。

争いがない部分として、もっとも簡便、かつ、金額的にも最低限の生活費を維持することが何とか可能な項目は、「慰謝料」と思われる。
私自身も、受任案件で、内払いの申立を行い、1ヶ月程度で入金が実現している。

問題は「内払いをしてもらえる」ということが、知られていないこと。
恥ずかしながら私も弁護士間のMLで情報入手し、「ああ、そんな手があったのか」と慌てて申し立てた位なので、被害者の方々に周知徹底されているとは思えない。

加畑さんの報告にあるような兵糧攻めをさせては適切な権利行使ができないのであるから、ADR側は、内払いの「申立」を待つのではなく、ADRの申立と同時に内払いの打診を東電に行い、慰謝料につき直ちに支払わせるよう勧告すべきである。
ここで「申立」があってから対応するという受け身の姿勢を根本的に転換しなければならない。


2,被害者に立証させない

前回の記事でも書いたが、当事者主義を前提に東電が意のままに作出した争点の立証責任をすべて被害者が負うという運用が、ADR手続きを長引かせる最大の要因となっている。

ADRは、東電が争点化したものでも、不当なものは、被害者に漫然と投げ返すのではなく「この項目についてはADRで和解案を出すので立証は不要である」等と毅然とした応対をすべきである。

立証不要の項目が多ければ多いほど、手続きが簡略化される。

この点は、申立代理人である弁護士も自戒を込めて反省しなければならないが、「立証しなければならない」とう普段の実務における常識を敢えて切り捨てる勇気が求められる。

3,とにかく分かりやすく大胆な基準を!

被害者の方に蔓延する不信感、絶望感を払拭するためには、「ADRを申し立てるとこんな良いことが具体的にあります」という基準が提示されなければならない。

「具体的に○○円上がる」ということが目に見えないと、申立段階でメリットを実感できない。

このブログでは何度も書いているが、もっとも被害を受けた住民が住んでいた地域は、日本有数の司法過疎地域である。弁護士に対する信頼、司法に対する信頼が元々形成されていない地域において、先が見えない手続きに二の足を踏む住民が多いのも無理はない。

弁護士の間では、「ADRより訴訟が有用だ」という意見を耳にするし、私も、最終的には訴訟は絶対に避けられないという意味では賛成する。特にいわゆる区域外避難者の問題は、ADRでは根本的な解決は難しいだろう。

ただ、「訴訟」という響き、イメージが、どれほど普通の市民にとってかけ離れ遠いものであるかも相馬時代に痛いほど分かっており、訴訟まで至らずともADRで解決できる案件はどんどん解決すべきだという考えを持っている。

ADRを簡単に切り捨ててはいけない、被害者救済のために魂のある器にしなければならない、All or Nothingの発想ではいけない。
私はそう思う。
そう思うから、黙っていられないのです。






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Last updated  2012.11.01 04:29:37
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