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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2013.09.14
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カテゴリ:東日本大震災
2020年に東京オリンピック開催が決まった。
「結実チームジャパン」、「列島、歓喜の渦」といった見出しが踊る新聞をみると、日本国民の一人として、喜ばなければいけないのだろうか、と複雑な気持ちになる。
すみません、私は、みんなの輪には入れません。

オリンピックという祭典自体には、何の恨みもない。
自分の限界に、たゆまず真摯に挑み続ける、心身共に美しいアスリートの姿には感銘を受けるし、心から応援したいと思う。

でも、東京にオリンピックを招致する過程で、私はたまらなく悲しい思いをした。心が鋭利な刃物でざっくりと刺され、未だに鮮血が溢れ出ているような気がする。
招致活動の中で明らかになった、「トウキョウ」の本音が、あまりにも無慈悲で冷酷だったからだ。

この悲しみを、まだ傷口が新しいうちに書き留めておきたい。
言葉にしないと悲しみ自体なかったことになってしまう、それだけは嫌だから。

まず、今回の招致において、IOC委員を含む海外の人々の最大の関心が、福島第一原子力発電所事故に伴う汚染水の流出事故であったことは疑いない。
オリンピックを無事に開催できるのかという局所的な問題に留まらない深い関心が寄せられていたことは、日本のメディアを通じてさえ(皮肉です)伝わった。
大気汚染や海洋汚染は、国境を超えて広がるからだ。

この状況下において、東京への招致を実現するためには、「オリンピックが開催される予定の東京には、汚染水の影響はない、東京は安全だ」と強くアピールする必要があったのだろう。

東京への招致を目指す人々は、汚染水をはじめとする原発事故の影響は、福島のみに限定されていると強調する方策をとった。

代表的な例としては、投票日3日前にブエノスアイレスで設定された会見で、東京オリンピック招致委員会の理事長が「東京と福島は250キロ、非常に離れたところにありまして、皆さんが想像するような危険性は東京にはない」と述べたことだ。

「東京は安全、福島と離れているから」という主張は、裏を返せば「福島は危険、原発と近いから」という主張と表裏一体であることは、特にうがった深読みをしなくても辿り着く結論である。

また、首相は、最終プレゼンテーションで、“The situation is under control”(《フクシマの》状況はコントロールされている)、「汚染水は、港湾内で完全にブロックされている」と言い切った。

これまでの報道で得た情報上は、under control とは程遠い状況であることは明らかであるし、「港湾内で」の方は日本国民ですら、初耳ですけど?という内容であって、仮にも、海外の人々にとっての最大の関心事に対して、真実と掛け離れた発言をすることが一国の首相として誠実であるかという問題は、非常に重要ではあるし、私自身、心穏やかではいられないのだが、本筋から外れるので、今はさておく。

私がここで問題にしたいのは、福島と東京は離れているから安全、汚染水は、福島の限られた海しか汚していないから大丈夫という趣旨の発言で明らかになっているトウキョウの本音だ。

福島は、汚れた厄介者。
東京は、関係ありません。
でも、東京のために(私は、福島のためではないと感じるのです)、東京に迷惑をかけないようにするために、福島の事故には対処します。

この傲慢さは何なのだろう。
一体、福島は、東京にどんな悪いことをしたというのか。
原発事故で故郷を追われた人々が、この本音を聞いて、どんな気持ちになったか、想像してほしい。

私は、耐え難い悲しみに襲われる一方で、頭の一角が透明な深い湖のように澄み切ってるような冴え冴えとした感覚で「ああ、この日のために、原発は、福島県浜通りに作られたんだ」と心底、納得した。

今回、事故を起こした福島第一原子力発電所は、「東北」電力株式会社ではなく、「東京」電力株式会社が設置したものだ。福島で作られた電力は、福島では1Aも使われず、長い送電線を伝って首都圏に送られていた。
何でこんなに遠い場所、それこそ250キロも離れた場所で電気を作っていたのか、答えはただひとつ。

万が一、原子力発電所が事故を起こした際に、東京を中心とする首都圏にあらゆる意味で影響を及ぼさないようにするためだ。

原子力発電所が事故を起こせば、その地域は根こそぎ破壊される。
そのことをもっとも認識していたのは、原子力発電所を設置する側の人々だ。
であれば、万が一の事故に備えて、原子力発電所は、なるべく人が少なく、日本経済に影響を及ぼさない過疎地域に設置することが望ましい。

この発想が根底にあるからこそ、日本の原子力発電所は、すべて、地方の辺鄙な場所にある。首都圏から遠く離れているのは勿論、その都道府県の中でも県庁所在地とはとりわけ離れた場所が選ばれている。

福島第一原子力発電所の設置場所も双葉町、大熊町。
原発事故が起きなければ、福島県にこんな名前の町があることすら、多くの人は知らなかったのではないか。
東京からの距離は当然、福島市や郡山市といった都市ともかなりの距離がある場所だ。

実際に事故が起きてみると、抑えきれない悲しみと怒りと悔しさと共に、最大限の皮肉を込めて言い切るが、「やはり過疎地に作った甲斐がありましたね」という結果になっている。
低額な賠償基準、適当な除染計画、原発再稼動の動き、いずれも、もし首都圏で事故が起きていたら、まったく違う展開になっただろう。巻き込まれる人間の数が、数桁異なるからだ。

そして、オリンピック招致の際にも、原子力発電所設置時の思惑通り、東京と切り離す作戦を取ることができたわけだ。
そう、まさにこの日のために、福島第一原子力発電所は、東京から遠く離れた辺鄙な場所に作られたのだ。

東京開催を喜ぶ人々を非難するつもりはない。私にそんな資格はない。
でも、今回の招致で漏れ出たトウキョウの本音が、福島をどれ程、手酷く傷付けたか、一瞬でも想像して欲しいとは思う。

少なくとも、私は、トウキョウの冷たい本音を知った今、東京でオリンピックだ!楽しみ!と浮かれることはできない。
また、これで汚染水対策が国際公約化されたから良かった等と、オリンピック開催に前向きな意味付を与えられる程、国を信用できる材料を得ていない。

私の取り組むべきこと、為すべきことは、東京でオリンピックが開催されてもされなくても変わらない。





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Last updated  2013.09.15 00:21:42
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