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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2017.11.19
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カテゴリ:読書日記

敬愛する石田武臣弁護士が、弁護士生活50周年を迎えられたことを記念して、総勢24名の弁護士が執筆者として名を連ねている「弁護士っておもしろい!」という題名の本が出版された。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7591.html

私は、この本を新幹線の中で読み、一章読むごとに心をゆさぶられ、涙した。
弁護士魂が詰まったこの本、現役のすべての弁護士、法曹を目指す若者はじめ、一人でも多くの方に読んで頂きたいと思う。

以下は、本の出版記念パーティーを兼ねた石田先生の弁護士生活50周年を記念するイベントで、私がお話させて頂いた内容です。大切な石田先生のために心を込めてお話したので、せっかくなので、ブログでもご紹介させて頂きますね。

**********

弁護士の葦名と申します。
私は56期、弁護士15年目に入ったところです。
元々富山県出身ですが、大学から上京しまして、弁護士になったばかりの最初の事務所が東京パブリック法律事務所、その後、相馬ひまわり基金法律事務所への赴任を経て、ちょうど10年前から静岡に移り、現在に至ります。

石田先生は、私が東京パブリック法律事務所に入所した際に、所長をおつとめになっていました。私にとっては、一番最初のボスで、どんなときも太陽のようなまぶしい明るさ、依頼者、弁護士、その他関係者問わず、人の心にぐいぐい迫る圧倒的な説得力、そしていつの間にか誰もが巻き込まれざるを得なくなっていく豪腕さを兼ね備えた敬愛する大切な永遠のボスです。

心から敬愛する石田先生にどんなお祝いの言葉がふさわしいのか自分なりにいろいろと考えまして、石田先生の弁護士50周年を記念して出版された「弁護士っておもしろい!」を拝読して触発されて生じた私の思いをお伝えすることで、お祝いの言葉にさせて頂きたいと思いました。

「弁護士っておもしろい!」の執筆者は、それぞれの専門分野の最前線で活動されている方々ばかりで、編著者の石田先生ご自身を含め、同業者にとってはまばゆいような憧れの存在がずらり並んでいる、非常に豪華な本ですが、その内容は、深い苦しみ、悲しみを抱えつつ、それでもなお、その現実の中で生きなければならない人に、弁護士として以前に、一人の等身大の人間として圧倒され、心を揺さぶられ、すべての悲しみ苦しみを取り除くことができないことを自覚しつつ、懸命にできることを模索し、決して諦めないで進む人間のネバーエンディングストーリーでした。

私は、新幹線の中で、この本を拝読したのですが、大波小波のように打ち寄せてくる怒濤の人間の物語に、ずっと涙が止まらない中、自分の弁護士人生を振り返り、自分も自分のネバーエンディングストーリーを紡いでいける弁護士になりたいと思いました。

冒頭に申し上げた通り、私は富山県出身です。
立山連峰、日本海などの雄大な自然に恵まれ、空気も清々しく綺麗で、魚介類を中心とする海の幸が美味しい素晴らしい場所ですが、亜熱帯地域と揶揄される静岡県とは比べものにならないのが厳しい冬です。今、晩秋を迎え、冬に向かって加速するこの季節、私が実際に見たわけではないのに、不思議と心に立ち上ってくる風景があります。

それは、まだ私が生まれてさえいなかった50年ほど前のこと、凍るように寒く真っ暗な部屋で、全身をくの字に折り曲げてうめき続ける女性の姿です。
彼女の口から、立ち上る白い息とともに発せられる言葉は、ただひとつ。
「いたいいたい」「いたいいたい」
四大公害病の一つであるイタイイタイ病は、カドミウムを長年摂取したことで、全身の骨がもろくなり、次々と骨折していく病気です。患者の方々が、全身を襲うあまりの痛みに、「どこが痛いの」「どのくらい痛いの」と聞かれても、「いたいいたい」しか答えられなかったことが病名の由来です。

原因が判明するまでの長い間、イタイイタイ病の患者さんは、風土病、業病の偏見に苦しみました。家族は患者を隠すために、陽光がささない暗い部屋に患者を閉じ込めていました。

皆様ご存じの通り、イタイイタイ病は、その後、加害企業相手の裁判に勝訴し、その判決を元に、国と、治療費等の助成はもちろん、発生原因対策等も交渉し、2013年、初提訴から45年の歳月をかけて、加害企業の全面謝罪、汚染土壌の復元、潜在性の腎障害の患者にも見舞金が支払われる等が盛り込まれた合意を経て、完全決着しました。つい4年前のことです。

いたいいたい、いたいいたい。
暗く寒い部屋であまりの体の痛みで痛い痛いしか言葉にならない人々の傍で、体は痛くなかったけれど、心が痛くて、あまりにも心が痛くて、いてもたってもいられなかった、動かないではいられなかった、動き続けずにはいられなかった人々の中に、沢山の弁護士がいたことに私は深く心を動かされずにはいられません。

そして、私は、この本を読みながらも、イタイイタイ病のようにわかりやすい形でなくても、目の前の人の声にならない「いたいいたい」を心で受け止め寄り添い圧倒的な現実を前にそれでもなお進む変わらぬ弁護士魂、弁護士スピリットを強く感じました。私たちが、大きな歴史の流れの中で今を生きていることを実感します。
 
今後も、声なき声に耳を傾け続けること、その声を言葉と理屈にして発信し続けること、そして、決して諦めないこと。この本を拝読しながら立ち上がってきた想像の中での原風景と共に大切に進んで参りたいと思います。

この本の共同編著者である寺町東子先生が、後書きで、石田先生のことを「若者たちの心に火をつけ、人と人とを結びつけ、化学反応を巻き起こしていくインフルエンサーとしての存在感が類い希な魅力」と評されていましたが、まったく同感です。
本書に触発されて私がまた新たに大きなエネルギーを得て、今後の弁護士人生を歩んでいくことを、石田先生に火をつけられた「元若者」の一人として、お誓い申し上げて、先生へのお祝いの言葉とさせて頂きます。

石田先生、どうぞいつまでもお元気でいらしてください。
そして、これからもずっとご指導よろしくお願い申し上げます。






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Last updated  2017.11.19 01:01:30



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