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弁護士YA日記

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2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2019.09.26
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カテゴリ:留学



さて、Young先生のご配慮で沢山の企画があったユタ州訪問ですが、まずはメインの目的であったプレゼンについて書きたいと思います。私のリサーチのテーマは、A comparative study of compensation systems for mass torts in the U.S. and Japan(大規模不法行為における日米比較研究)です。自分の関心を絞っていくことに日本でリサーチプランを作成するときから苦しんでいたのですが、正直なところ、アメリカに来てもっと大変になりました。日本とアメリカの法制度の違い、法律家の果たす役割の違いが、様々な部分に影響をもたらしており、関心を持つ分野も次々に広がっていく感じで、とても整理しきれないし、どこにリサーチの対象を絞っていけば良いのか分からないという有様でした。ただ、今回のプレゼンは、無理矢理にでも、漠然とした思考をアウトプットできるレベルにするための非常に貴重な機会になりました。資料を読む際にも、アウトプットを意識しながら読むのと漫然と読むのは全然違うので、強制の契機があって、本当に良かったです。

とはいえ、6~7月はIEI、8月はLaw500でかなりの時間を取られていたこともあり、本当に研究に専念できるようになったのは9月からで、とにかく時間がありませんでした。英語以前に、形になるプレゼンができるのか、焦りと不安と恐怖に追い詰められる緊張する日々でした。自分の研究ですので基本的には自分が全面的な責任を負っているものの、相談できる人には何でも相談しようと思い、プレゼン一週間前には、UIUCのHost ProfessorであるAnderson教授に、プレゼン骨子を見て頂き、非常に的確なアドバイスを頂きました。研究室にお伺いするなり、「あなたがこのプレゼンで言いたいことを2分で言ってみて」とご指示があり、まさかそんなことを言われると思わなかった私が、「自分の言いたいこと」を考え考え、何とか辿々しく話し終えると、「OK!まずは、それが一番大事。何のためにここに来たのか、何を言いたくて来たのか、それを2分でも5分でも10分でも良いんだけど、最初に紹介することを強くお勧めします。聴衆が、その後のあなたの話を目的と関連づけながら聞くことができるから、退屈にならないからね」と今回のプレゼンに限らず一生役に立つようなアドバイスをいきなり頂き、本当にご相談して良かったと思いました。Academic Termも細かく直して頂き、最後に、「アメリカでは、あなたみたいな人を励ますために、Break a leg!っていう言葉があります。私もあなたにこの言葉を贈ります。プレゼンが終わったら、どんな感じだったか必ず教えて下さいね」と送り出して頂きました。Break a leg!という言葉は、大舞台に向かう人に、足が折れるくらい全力を尽くして頑張れ!というニュアンスの言葉で、本当に励まされました。

Anderson教授のアドバイスに従い、自分は一体何が言いたいんだろう、ということを改めて考え、その視点からプレゼン全体の構成を再考し、まだクリアな結論にはとても辿り着けていないと断りつつ、何故わざわざ日本での活動をすべて中断してここまで来たのかを自分で考え抜き、冒頭で説明することにしました。それが下記の部分です。

-What brought me to the U.S.
(1) the strong doubt for the power of “Compensation” to save the victims of severe nuclear accident
(2) the strong sense of crisis to the present compensation system in Japan

-私をアメリカに連れてきたもの
(1) 深刻な原発事故の被害者を救うための「賠償」の効力に対する強い疑い
(2) 日本の現在の賠償システムに対する強い危機感

(1)と(2)は矛盾するかもしれないけど、「賠償だけでは被害者を救えない」ということを正面から認識することは弁護士の本来的役割-目の前にいることを救うこと-を考える上でとても大事だと思っていること、でも、「賠償は意味がない」等と評論家のようなことを言って終わるわけにはいかないとも同時に思っていること、賠償が被害者の被害回復のための有効なツールであることは間違いない以上、現場の実務家として、苦しい現状の中でどうやったらもう少し有効なツールに改良できるのかを考えるのも私の大切な仕事だと思っている、というようなことを話しました。

どの程度、聴衆に伝わったかは分かりませんが、うんうんと目を見て頷いて下さる方々もいらしたので嬉しかったですし、自分の問題意識をきちんと整理できたことは良かったと思っています。ただ、プレゼン全体としては、自分の思考が深まっていないことがそのまま現れた非常に未熟な構成で、「比較研究」と言えるレベルに達していないことは行う前から明らかでした。
また、1時間半、英語で話し続けるということ自体が私にとって初めての体験で、特に後半、頭が疲れてしまって、文章をうまく構築できなくなってきてしまい、本当に悔しかったです。日本語なら何時間だって話せるのに、と思いますが、私の英語力が私の気持ちについていかなかったというのが正直なところです。終わったその瞬間から今に至るまでずっと、「悔しい、本当に悔しい、もっと頑張る、絶対頑張る!」という気持ちしかありません。でも、少なくとも言えるのは、今回のプレゼンは、自分の今の実力通りであるということです。もっとうまく出来たはず、という後悔はありません。今後、助けたい誰かと自分の成長のための研究を深め、英語力を一歩ずつ高め(本当は「飛躍的に高め」と書きたいのですがそんな魔法はありません、毎日ちょっとずつ少しずつ努力するしかありません)、今よりもっともっと進化していくことをYoung先生にも、雄大なGrand Canyonにも、誓いましたので、その誓いを実行するのみです。

それでも、拙いプレゼンを15人ものユタ州弁護士会の方々が聞いて下さって上に、実務的な鋭い質問を頂いたことは大きな喜びでした。質問は全部で3つあり、(1)私が報告したメキシコ湾岸のOil Spill事故で補償基金を利用した人、クラスアクションを利用した人との割合の統計はあるか、(2)先日の東電幹部の無罪判決について日本の弁護士としてどのような見解を持っているか、(3)国の責任を認めた判決がいくつか出ているのに、更に訴訟を続ける意味は何か、判決に拘束力はないのかというものでした。

(1)については私がお答えしましたが、(2)については、その場にいた日弁連から来た弁護士たちに助けを求めました。渡辺淑彦弁護士からは「非常に残念な判決ではあるが、刑事手続きにならなければ永遠に出ない証拠が沢山出てきた、という意味では、結果とは別に刑事事件になった意味はあると考えている」という答えを頂き、質問者にお伝えしたところ、「日本の民事手続きにはDiscovery(全面証拠開示手続き、のようなものです)がないのか」と驚かれました。日米の基本的な法制度の違いが明らかになった瞬間でもあり、とても興味深いやりとりでした。津久井進弁護士からは、「日本には組織罰の既定がない。仮に、組織罰の規定があれば違う結果になった可能性がある」というこれまた非常に示唆に富むご回答を頂きました。アメリカの刑事手続きでは、会社を罰する仕組みがあるのかなあ、と非常に興味を持ちました(すみません、まだ調べていません)。いずれにしても、私一人ではお答えできない質問だったのでとても助かりました。

(3)については質問自体がかなり難しかったこともあり、Young先生が「日本はCivil Lawの国なので、Case Lawの国であるアメリカとは先例の拘束力がまったく異なる」という概括的な説明を頂き、私から「地裁判決は基本的にその事案のみにしか拘束力がなく、Officialな拘束力がない。国の責任を認めた判決が出ても、事実上世論を喚起するような効果はあるが、一つ勝ったから安心ということはなく、闘い続けなければいけない」というようなことを少しだけ補足しました。どの質問も、弁護士が聴衆であることを実感させられた実務家ならではの質問で、やりとりできること自体が本当に嬉しかったです。

今、渡米して以来の大きな目標だった「ユタ州弁護士会」でのプレゼンを終えたわけですが、このプレゼンの準備過程で学んだことは勿論、実際にやってみて思ったこと、感じたことは本当に大きく、すべてを自分の成長に繋げていきたいと思います。振り返ってみて、改めて何という貴重な機会だったのだろうと思います。



続きはこちら。
https://plaza.rakuten.co.jp/yyy0801/diary/201909260002/





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Last updated  2019.09.26 20:35:46



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