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カテゴリ:読書週間スペシャル
読書週間スペシャル1週間前に、「あと7日です。1日1回読めば、7回練習できます」というおたよりを担当者のみなさんへ出した。ほんとうにこのとおりにきちんと毎日練習してくださったのが、4年生の男の子のおばあさんであるIさん。昨年も読書週間だけならと参加してくださった。そうそう、昨年の図書館の5月の講座(記事はこちら)で『キャベツくん』を読んだご婦人、あの方が実はIさんで、よくよくお話をうかがうと私と亭主殿の小学校時代の同級生のご母堂でもあった。6年生のお孫さんはキイと同級生で、ご縁だなあ。
5年生の賢治で何を取り上げるか難航していたときに、もし私が抜けるとしたら4年にどなたに回ってもらうか思案、実録ものの『かみず』を戦中世代の方に読んでもらったらどうかと考えたことがあった。素話をお願いする方にもお一人該当するお歳の方がいらしたこともあり。しかし実際にはお願いする前に、5年生のプログラムは良い感じで決まり、そしてIさんはこれならと『かわいそうなぞう』を手にとってくださった。最初にこれを担当することになっていた人は、どうしても途中で泣いてしまって読めなくなると非常に苦労されていたので、欠員が出た3年生で『チム・ラビットのぼうけん』に回ってもらう。こちらは彼女の読みにどんぴしゃな本だったのでかえって良かったくらい。 戦争で動物でとなると、読む側も情緒的になりすぎずにしっかり伝えるために、内容理解と練習は通常以上に必要。Iさんも「泣かないように、ってがんばって練習しました」と微笑みながらだがおっしゃっていた。娘さんやお孫さんにダメ出ししてもらいながら練習を重ねてくださったという。『かわいそうなぞう』にしたのは空襲が直接出て来るものは気持ちが重なり過ぎてつらいということだった。もう1冊の『えんぴつびな』はフィクションだが疎開先で空襲に遭う話だし、『かみず』は全編、甲府空襲。実はIさんは東京大空襲で生きのびた経験をお持ちなのだ。両国橋の上から隅田川の向こうが燃えるのを見たことなどをうかがう。あの3月の夜は4歳だったそうだ。それでも忘れられない、と。 4年生向けの読書週間ポスターのキャッチフレーズ、いいものが思いつかずもう苦し紛れに「70年前、戦争があった」とつけたのだが、偶然Iさんが生まれたのがこの年で、思いがけずどんぴしゃのコピーとなった。
象をはじめ猛獣を処分するよう命令したのは実際には軍部ではなく現在の東京都知事にあたる内務省の役人。また時系列が作中では曖昧だが、この命令が出された時にはまだ東京への空襲はなかった。そもそも象を殺すのは戦況を深刻にとらえていない国民への見せしめの意味が大きかったという。南方帰りの役人は、現地の厳しい状況を目の当たりにしていただけに、大衆の気を引き締めなければと考えたらしい(それって負け戦を知らされてなかったからなのに)。だから、仙台その他への疎開ではなく、帝都で殺す必要があったのだ。死なせた動物たちの慰霊祭もだから大がかりなもので、しかし天幕で隠された奥ではまだ2匹の象トンキーとワンリーが飢えつつも生きていたということだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.11.10 19:01:01
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