本のタイトル・作者
団地のコトリ (teens’ best selections 54) [ 八束 澄子 ]
本の目次・あらすじ
バレーボール部の美月は、中学3年生。
父は小学4年生のときに過労死し、保育士の母、祖母が遺したインコのピーコと団地の一室に暮らしている。
階下の柴田のじいちゃんは、奥さんを亡くしてから塞ぎがちだったが、なぜか最近歌声が聞こえる。
ーーーそこに、だれか、いるの?
引用
勉強は明日の自分へのプレゼントだ。だれのためでもなく、明日を生きる自分の糧となるものだ。
感想
2021年読書:199冊目
おすすめ度:★★★
惜しい!という感じがするYA小説。
クラブ活動、先輩と後輩、同級生同士の女子のやりとり、進学、貧困、信仰、家庭環境、居所不明児童…。
いろんな要素が入っているけど、短くまとめてあるので、なんだか物足りない。
中身はパンッパンで、受け止めきれないくらいに詰まってるんだけど…。
児童書を、もう「子ども」の目線では読めなくなっているんだな、と思った。
私は母の視点で物語を読んでしまう。
最後、お母さんは週末里親を申し出る。
すごいな。
何かしてあげたいと思っていても、それを行動に移すのは難しい。
ここ、美月のほうが大人な目線で見ている。
この子が本当に良い子かなんてわからないでしょう、と。
それでも一歩前に踏み出す。
責任を引き受けるのは、難しい。
遠いところの誰かにお金を渡す方が、簡単だと思う。
私の子供が、誕生日に、クリスマスに、衒いなく欲しいものを口にする。
彼らはそういう環境にいるのだ、と感じる。
そうではない子供がいる。
私は彼らに何の責任も持たないんだろうか。
美月は、団地の一階下で、母子が飢え死にしそうになっていたことに胸を突かれる。
たくさんの暮らしのモザイク。
集合住宅。積み重ねられた生活。
壁一枚隔てた先で、苦しみがあるのなら。
海の果てで、爆撃に曝された子供を助ける前に、出来ることがあるのか?
(けれど一方でその子供を見捨てることも出来ないのでは?)
そして、何もしないこと、を選んでしまう。
迷っていることを言い訳に、消極的に加担している。世界に。
何かをしたい、と思う。
出来る範囲で良い。その範囲から、はじめよう。
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