書名
無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記 [ 山本 文緒 ]
目次
第1章 5月24日~6月21日
第2章 6月28日~8月26日
第3章 9月2日~9月21日
第4章 9月27日~
感想
NHKラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」(2022/11/18放送回)で紹介されていて読んでみたくなった本。
(ちなみにラジオは翌日、著作権法で認められる範囲を超えて本文を読み上げたとして謝罪)
山本文緒さん。
私は亡くなってから知って、2作ほど読んだ。
2022.02.28
ばにらさま [ 山本文緒 ]
2022.04.03
自転しながら公転する [ 山本文緒 ]
58歳での突然の余命宣告。
夫とふたり、無人島に流されたように、死に囲われた日々を送る。
それにしてもがんって、お別れの準備期間がありすぎるほどある。いや4月に発覚して今は9月なのだからあっという間の時間だったはずだけれど、とても長い期間お別れについて考えた気がする。別れの言葉が言っても言っても言い足りない。
2023.04.28
養老先生、再び病院へ行く [ 養老孟司 ]
でも言っていた。
「がん」と言われる。余命が宣告される。残り時間が示される。
事故で亡くなるのとも、急病で亡くなるのとも違う、死へ向かう準備時間がある。
目減りしていく砂時計のように。
余命が宣告されていても、『きのう何食べた?』の新刊を読み、読みかけだった金原ひとみさんの『アンソーシャルディスタンス』が死ぬことを忘れるほど面白いと言い、悲しくて頭が割れそうでもアマゾンの領収書を印刷する。
それが生きていること、と著者は言う。
そうなんだろう、と思う。
抗がん剤治療、昔よりずいぶん負担は軽いと思っていたけれど、この本を読むととんでもない。
著者が1回でやめたいと思うくらい、つらいものだった。
緩和ケアに切り替え、そうするともうできることはあまりない。
腹水が溜まり、水を抜いてもらう。
2021.09.03
ねこマンガ 在宅医たんぽぽ先生物語 [ 永井康徳 ]
2022.10.22
ねこマンガ 在宅医たんぽぽ先生物語 おうちに帰ろう [ 永井康徳 ]
家で看取ること、について前に読んだこれを思い出した。
著者は病院へ入院することを嫌がり、在宅看護で最期まで過ごす。
彼女は日記を書く。パソコンに向かっていられなくなったら、手書きで。
手書きができなかったら、音声入力で。
それもできなくなったら、口述筆記してもらう。
明日また書けましたら、明日。
この日記は、亡くなる9日前、この一文で終わる。
作家だから、なんだろうか。
最後の最後まで書いていた人。
そして私は、どうしてそれをまた、読みたいと思うんだろう。
死を、知りたいと思うからだ。
自分がまだ経験したことがない、未知のもの。
それを綴った道のりの記録。
それはその人の「生」を、知りたいと思うからだ。
どう死んだかは、どう生きたかということでもある。
その、人生を。
たぶんこの本を読んだ人はみんな考える。
自分にあと120日しか残されていないとしたら?
みんなから切り離されて、離れ小島に流される。
そのとき、私はひとりではないのだろうか?
あれをしておけばよかった、これをしておけばよかった。
120日の砂時計はひっくり返されて、サラサラと砂はこぼれ落ちる。
それでもゴミを捨て、洗濯をして、本を読んで、皿を洗うんだろう。
何かの予告を見て、その時自分はもうこの世界にはいないんだ、と思うんだろう。
未来の約束は消えて、今だけが存在するようになる。
できなかったことを数え上げて、笑ってしまう。
バンジージャンプだってしなかった。だから何?
無人島から、生者は舟に乗って戻る。
死者はひとり、島に残るのだろうか。
それともそこから、また別の場所へ舟を漕いで行くのかな。
はるかニライカナイがあるなら、それをまた楽しみに出来るだろうに。
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