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カテゴリ:夏目漱石
吹井戸やぼこりぼこりと真桑瓜 漱石(明治29) 瓜西瓜富婁那ならぬはなかりけり 漱石(明治32) 漱石は売りが好きというより、妻の京子のような丸顔ではなく瓜実顔が好きでした。 漱石の初恋の相手と言われる議姉の夏目登世や大塚楠緒子、『草枕』のモデルといわれる前田卓子などみんな瓜実顔です。 漱石が鰹節屋のお内儀に惚れたという噂は、門人たちにあっという間に広まりました。中でも興味を抱いたのが、森田草平でした。この評判のお内儀さんを拝見しようと思い、鰹節屋の前を通るたびに店内を覗き込見ますが、店には出ていません。ようやくその姿を眺めた時には、帳場が暗過ぎて、どのような姿形をしていたかが判然としませんでした。ただし、「瓜実顔のしとやかな、どこか弱々しい所のある女」だったと草平は認識しています。 もともと、漱石の好みは瓜実顔に銀杏返しの髪型で、作品にも多く登場させています。『夢十夜』の「第一夜」には「腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますという。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている」、『道草』では「この女の表情を見ると、余はいずれとも判断に迷った。口は一文字を結んで静である。眼は五分のすきさえ見出すべく動いている。顔は下膨の瓜実形で、豊かに落ちつきを見せているに引き易かえて、額は狭苦しくも、こせついて、いわゆる富士額の俗臭帯びている。のみならず眉は両方から逼って、中間に数滴の薄荷を点じたるごとく、ぴくぴく焦慮ている。鼻ばかりは軽薄に鋭どくもない、遅鈍に丸くもない。画にしたら美しかろう(道草 3)」と書いています。
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最終更新日
2021.05.02 19:54:00
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