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テーマ:秘密トップ・シークレット(19)
カテゴリ:「秘密」詩・小説
BLの苦手な方は読まないでください。
以前に書いた「秘密」の二次創作『疑惑』の続きです。 あくまで二次創作ですから苦情は受け付けません。 何卒お許しくださいませ。 「兄ちゃん待って。克洋兄ちゃん、待ってよぉ~。」 「ハハハ・・・洋介、早く来いよ。」 洋介は屈託のない笑顔で振り返った克洋の差し伸べた手を 捕まえた。菜の花畑のあぜ道を二人で手を繋いで走っていく。 五月晴れの空は何処までも青く、遠くに見える山々は 都会では味わえない安らぎと癒しをもたらしていた。 祖母の家に里帰りをすると決まって従兄の克洋に会えた。 克洋は洋介が物心つく前からいつも遊んでくれた。 ベビーシッターとは違い本当の友達のように遊んでくれる 克洋が洋介は好きだった。蝶を捕まえにお花畑を走った 幼い頃の記憶が夢に蘇る。洋介は死んだ克洋の夢を見ながら これは夢なのだとなぜだか思った。 暖かな陽ざしを浴びて駆けまわる二人だけの幸せな空間は そう長くは続かない。いつの間にか克洋は大人になっていた。 克洋は洋介の手を放して、美しい青年の元へ駆け寄った。 「紹介するよ。薪剛。俺の親友だ。」 悪びれもせず紹介する克洋に洋介は腹が立った。兄ちゃんの 親友はこの僕だ。あんな女みたいな顔の奴なんかじゃない。 僕に黙って親友を作るなんて許せない。洋介が怒っていると 二人は立ち去ってしまった。 「待って。兄ちゃん、待ってよぉ~。」 置き去りにされて泣きそうな声で洋介が叫ぶと、克洋は 「ハハハハ・・・・」 と高笑いして薪の肩を抱き、いなくなってしまった。 独り残された洋介は悔しくて泣いた。そして大泣きしていると 夢から覚めた。 ピピピピピ・・・・目覚まし時計の音がうるさい。 佐伯洋介は目覚まし時計を止めると、のそのそとベッドから 起き出した。また、あの嫌な夢を見た。幾度となく見る夢に 佐伯はうんざりしていた。日本に帰って来てからは世田谷の 邸宅を一軒もらって独り暮らしをしている。洗面台に向かい、 顔を洗おうとしたが、口元に水がしみて痛かった。鏡には 口の端が切れてあざをつくった自分が映っていた。 「くそっ。あいつ許せない。」 昨日、青木に殴られた口元を押さえて佐伯は鏡を睨みつけた。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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