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遊心六中記

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2022.01.15
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カテゴリ:探訪
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​  
前回、大雄宝殿の十八羅漢像が安置されている全景をご紹介しました。
ここでは十八羅漢像を個々に眺めてみたいと思います。

その前に、やはりまず「羅漢」とは? ですね。

羅漢は「阿羅漢の略で、敬われるべき人の意」(資料1)です。
そして、阿羅漢ですが、これはサンスクリット語(梵語)のアルハンを漢字で音写した言葉だそうです。漢訳すると、<応供​(おうぐ)​>で、「尊敬・施しを受けるに値する聖者(しょうじゃ)を意味する。インドの宗教一般において、尊敬されるべき修行者をさした。」(資料1)とのこと。

釈尊は10の別称(十号)を持っておられて、その一つに<応供>があったそうです。
ところが、後になると、仏の別称であることとは区別して、仏の弟子に<阿羅漢>の称が当てられるように変化しました。仏の十大弟子は勿論最高の阿羅漢ということになります。
「原始仏教・部派仏教では修行者の到達し得る最高位を示す」(資料1)ことになり、一方、大乗仏教では「批判的に声聞を阿羅漢と呼び、仏と区別した」(資料1)という経緯があるそうです。声聞はサンスクリット語では「教えを聴聞する者」を意味し、もともとは出家、在家を問わずに使われる言葉だったのですが、後に仏教では、出家の修行者だけを意味することになり、出家の修行者は阿羅漢を目指すということになります。

次に、十六羅漢、五百羅漢、という言葉を見聞されたことはありませんか?
そこに、さらに十八羅漢・・・・・です。

まず、<十六羅漢>ですが、これは「中国・日本では仏法を護持することを誓った16人の弟子」を称する言葉だそうです。
一方、<五百羅漢>は、「第1回の仏典編集(結集)に集まった500人の弟子」を尊崇するのに使われる言葉となったそうです。尚、異説もあるそうですが・・・・。(資料1)
また、五百羅漢のおのおのについてその名称を記した経典はないそうです。(資料2)

とくに禅宗では修行の過程にある者の姿として十六羅漢を尊び、唐時代末から五代にかけてもっとも信仰が盛んになったと言います。日本には、東大寺の奝然(ちょうねん)が中国より十六羅漢図をもたらしたと伝えるとか。(資料2)

十六羅漢、五百羅漢については補遺に載せた事例をご覧ください。

そこで、<十八羅漢>です。こちらは、鎌倉・室町時代に盛んとなっていった<十六羅漢>に対して、明時代の寺院の形式を受け継いで、「慶友(けいゆう)尊者」と「賓頭盧(びんずる)尊者」を加えて<十八羅漢>を祀っていると言います。(資料3)

 大雄宝殿の堂内に入ると、すぐ右側、
南側壁面に沿って、羅漢像が安置されています。

大雄宝殿に居並ぶ十八羅漢さんを一人ずつ眺めていきましょう。
尚、当日逆光ぎみだったりうまく撮れなかった羅漢像については、2013年6月に探訪した時に撮っていたものに一部代替します。(☆マークを付記)

後日に学んだことを補足しながらのご紹介です。
羅漢さんを意識的に考えたのはこれがまあ初めてに近いです。私にとっていい機会。お付き合い下さい。

 慶友尊者 
​十六羅漢にさらに加えられた「慶友(けいゆう)尊者​」が西端です。
               
十六羅漢を説く経軌には玄奘訳の『大阿羅漢難提密多羅(だいあらかんみたら)所説法住記』という典籍があるそうです。この『法住記』の著者が慶友尊者です。
  
十八羅漢について、調べていて興味深い伝えに出会いました。以下、引用します。
”「法住記」には十六羅漢の姿に対する具体的な描写はないのですが、唐の末期に「張玄」「貫休」という二人の僧侶が、「法住記」をもとに想像を加えて十六人の大羅漢の絵を描きました。完成後、「法住記」の作者である「慶友尊者」を記念して、十七番目の羅漢として描き加えました。しかし、中国人は偶数を好むので、十七では座りが悪いとして、「賓度羅尊者(ひんどらそんじゃ)」という名前を勝手に作り、作品に書き加えてしまったのでした。

宋の時代の大詩人「蘇東坡(そとうば)」は、在家弟子として深く仏教に帰依していましたが、「張玄」と「貫休」が描いた十八羅漢の絵の下に、この絵をほめたたえる詩を書きました。それから、中国では十八羅漢が広まるようになったのです。

十八羅漢の名前と姿形がこのようにして世の中に広められた後、「慶友尊者」と「賓度羅尊者」は、「張玄」と「貫休」が自分達の都合で勝手に増やしたものなのだから、後世の自分達も好きなようにしていいだろうということで、様々なバリエーションが出てきました。”(資料4)

歴史的な経緯があるのですね。おもしろい。

 阿氏多尊者
阿氏多(あした)尊者。梵名はアジタ。鷲峯山(じゅぶせん)にあり、弟子1500人と『法住記』に記されていると言います。以下、所在地と弟子の数を同様に記します。(資料2)
                

  ☆ 因掲陀尊者
因掲陀(いんかだ)尊者。梵名はアンガジャ。広脇山(こうきょうせん)、1300人
                

 逆光!

 ☆ 羅怙羅尊者
羅怙羅(らごら)尊者。梵名はラーフラ。畢利颺瞿(ひりようく)州、1000人。
手許の二書では、最初の「羅」という漢字の代わりに「囉」がつかわれています。どちらもルビは「ら」なのですが。(資料1,2)
仏の十大弟子の一人、羅怙羅(ラーフラ)だけが、十六羅漢の一人に入っています。

ラーフラは釈尊とヤショーダラーの間に生まれた子。出家後「智慧第一」の舎利弗(しゃりほつ)に就いて修行したそうです。「密行第一」、学習第一の比丘と呼ばれました。(資料1)

​強烈な造像です。ここで逆光だったのが実に残念・・・・・。​

  ☆ 戍博迦尊者
戍博迦(じゅはくか)尊者。梵名はジーヴァカ。香酔山(かすいせん)、900人。
               

  迦理迦尊者
迦理迦(かりか)尊者。梵名はカーリカ。僧伽荼(そうぎゃだ)州、1000人。
              

 諾詎羅尊者 
諾詎羅(なごら)尊者。この羅漢名に該当する尊者は資料により使われる漢字がことなります。参照資料の一つは「諾矩羅(なくら)」(資料1)、他は「諾距羅(なくら)」(資料2)としています。この2つの梵名は同じナクラです。南瞻部(なんせんぶ)州、800人。
同じ尊者をさすと思うのですが不詳です。課題が残りました。
              

 迦諾迦跋釐惰闍尊者
迦諾迦跋釐惰闍(かなかばりだじゃ)尊者。梵名はカナカ・バーラドヴァージャ。東勝身(とうしょうしん)州、600人。
               

 賓度羅跋羅惰闍尊者
賓度羅跋羅惰闍(びんどらばらだじゃ)尊者。梵名はビンドーラ・バラドヴァージャ。西瞿陀尼(せいくだに)州、1000人。
               

 
南側壁面の東端には、達磨さんが置かれています。その前には、香炉と小さな梵鐘が置かれています。

     
        お堂の南東隅側から眺めた南側の羅漢像の全景です。

それでは、本尊の背面の通路を歩み、北側壁面の羅漢像を東端から拝見していきましょう。
 迦諾迦跋蹉尊者
迦諾迦跋蹉(かなかばっさ)尊者。梵名はカナカヴァッツァ。加湿弥羅(かしつみら)、500人。
                 

 蘇頻陀尊者
蘇頻陀(すびんだ)尊者。梵名はスビンダ。北俱盧(ほっくる)州、700人。 
手許の二書は、「そびんだ」とルビをふっています。(資料1,2)
             

 跋陀羅尊者 
跋陀羅(ばっだら)尊者。梵名はバドラ。眈没羅(たんもら)州、900人。
                   

 伐闍羅弗多羅尊者
伐闍羅弗多羅(ばじゃらふっだら)尊者。梵名はヴァジラプトラ。鉢刺拏(はらな)州、1000人。
この尊者名のルビは参照資料により異なります。一書は「ばじゃらほったら」(資料1)、他書は「じゅばじゃらほったら」(一字目に戎の文字が付いています)(資料2)です。
                     

 半託迦尊者
半託迦(はんたか)尊者。梵名はパンタカ。三十三天、1300人。
             

 那伽犀那尊者
那伽犀那(なかさいな)尊者。梵名はナーガセーナ。半度波(はんどは)山、1200人。
                  

 伐那婆斯尊者
伐那婆斯(ばなばし)尊者。梵名はヴァナヴァーシン。可住山(かじゅうせん)、1400人。
              

 注荼半託迦尊者
注荼半託迦(ちゅだはんたか)尊者。梵名はチューダパンタカ。持軸山(じじくせん)、1600人。
              

 賓頭盧尊者
賓頭盧(びんずる)尊者は上掲の賓度羅跋羅惰闍尊者と同一であるとも考えられているそうです。(資料2)
              

     
        お堂の北西隅側から眺めた北側の羅漢像の全景です。

上記の『法住記』は十六羅漢を説明していますので、参照資料1,2では、賓度羅跋羅惰闍尊者を第一尊者に、注荼半託迦尊者まで同じ順番で表記されています。それと対比すると、萬福寺の十八羅漢の並ぶ順番はかなり違っています。この辺りも興味深いところです。

賓頭盧尊者は一番なじみがあるかもしれません。お寺の仏堂の外陣や外縁に安置されていることが多い尊者です。病者が患っている箇所と同じ賓頭盧尊者の部分を撫でると治るという信仰があり、「​​撫(な)で仏(ぼとけ)​​」として信仰されてきました。多くの賓頭盧尊者像はテカテカと光った部分が残る像です。衛生上の観念も浸透し、今では撫でるということが減ってきているようですが・・・・。
また、中国では『請賓頭盧法』に「法会を設けるときは、必ず賓頭盧尊者を請じて食事を供養する」という記述があることから、寺院の食堂に彫像の賓頭盧を安置し、聖僧として祀ることが行われたと言います。(資料2)
羅漢像は群像として造られることが一般的です。賓頭盧尊者だけが単独で造立されるというのも興味深いと言えます。
賓頭盧尊者は、「コーサンビーの優塡王(うでんおう)の大臣の子で婆羅門(ばらもん)の出身。神通力に優れていたが、それ以上に説法に優れていたので獅子吼第一と呼ばれた」(資料1)そうです。

一つご紹介しておきたい像があります。2013年6月に萬福寺を探訪したとき、この大雄宝殿の本尊から南西側に隠元禅師像が安置されているのを拝見しました。
              ☆
 ☆
         ☆
       ☆
        「隠元倚騎獅像」の画像を彫像にしたものを間近に拝見できました。

今回、南側の羅漢像群を眺めた後、一瞬あれっと感じたのです。隠元禅師像が以前のようにはなかったのです。そのときはそのままで、北側の羅漢像群の拝観に行きました。
記録写真を整理し、まとめながら、改めてなぜだろう、と考えていて気づきました。
 
上掲の画像から切り出した部分図です。その位置に厨子が設置されていたのです。
多分、現在はこの隠元禅師像がこの厨子に安置されているのではないかと思います。
厨子の扉が閉じてあり、意識せずに通過してしまったのか・・・・定かではありません。残念。

それでは、三門、天王殿、大雄宝殿と一直線上に配置されたその先にある法堂に向かいましょう。

つづく

参照資料
1)『岩波仏教辞典 第二版』 中村・福永・田村・今野・末木[編集] 岩波書店
2)『仏尊の事典 壮大なる仏教宇宙の仏たち』 関根俊一編 学研 p198-209
3)『最新版フォトガイドマンプクジ』 萬福寺発行 萬福寺売店にて購入した小冊子
4) ​30.十六羅漢と五百羅漢(3) ​:「全日本少林寺気功協会」

補遺
十六羅漢像​  :「e國寶」
紙本淡彩十六羅漢図・全16幅 久隅守景 筆​ :「臨済宗建長寺派 金徳山光明寺」
阿羅漢​  :「Web版 新纂浄土宗大辞典」
十六羅漢​ :「Web版 新纂浄土宗大辞典」
十八羅漢​ :「Web版 新纂浄土宗大辞典」
羅漢(阿羅漢)とは?羅漢像のある有名な寺院や施設など​ :「よりそうお葬式」
聖者のかたち -羅漢-​  :「福岡市博物館」
苔むす百面相 無常説く 石峰寺の五百羅漢像(時の回廊)​:「日本経済新聞」
愛宕念仏寺  1200羅漢の寺​  :「4travel.jp」
彦根の粋なスポット、名庭と五百羅漢~天寧寺・龍潭寺~​ :「トラベルjp」
五百羅漢​ :「川越大師 喜多院」
富山の宝 長慶寺 五百羅漢​ :「NHK」
天恩山五百羅漢寺​ ホームページ
世界遺産 五百羅漢 石見銀山​  :「羅漢寺」
廣田寺木造十八羅漢像​  :「松本市」

  ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

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Last updated  2022.01.23 11:14:32
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