三島SM谷崎
筆者はフランス文学者とのことだが、私の好きな文体なので面白く読んだ。言いにくいこともズバリと、さらりと言ってのけるて、持って回ったような言い回しもなし、単純なことを複雑にいいまわすこともしない。直截的でありながら適切な文章表現には妙な説得力があり、三島谷崎両者の小説の解釈と彼らの精神分析(?)には、なる程とうなずかされてしまう。好みの三島作品「純白の夜」や「月澹荘綺譚」を取り上げられているとこも嬉しかった。ただし三島がM,谷崎がSという見方に取り立てて新しさはなく、眼から鱗というほどの新発見もない。SとMはリバ可能なんて説は、とうの昔に言い尽くされたこと。100%S、100%Mの人物なんて現実でも虚構でも存在しないというのが当方の考え方。それから、作品解釈から作者の精神分析へという手法はもっとも分析は穿ちすぎるとかえって嘘くさくなるので深堀りは程々にというのも私の思うところではあるけれど。ところで、筆者の翻訳した本も読みたくなった。が、私の嗜好にかなったジャンルの翻訳本があるかどうか....さて?