チラ裏 ボディ・メッセージ
ネタバレあり。:::::上手く翻訳されたアメリカ探偵小説を読んでいる気分にさせる文体、発端の意外性のみならず、謎の着想からして奇抜。それでいながら、同じ設計の二つの屋敷のトリックと、最重要なストーリーの核になる謎は某名作の本歌取りであることを故意に読者に判らせる描き方なのは、むしろ気が利いている。作者の遊び心か、それともフェアな手がかりの提示だろうか。どちらも〇〇〇〇の作品なので、少なくともそのファンである私としては美味しく頂いた。スタンとケンとディーが三つ巴で捜査をすすめる展開で刑事小説の面白さが加わるし、探偵社のその他の面々が推理を合戦を披露する場面も多重解決ものを読む楽しさが感じられる。と、構築は非常に凝った読み物ではあるのだが、では要の謎の解決は如何なものかといえば、伏線の回収や推理のロジックが謎の複雑さに追いついていない。だから期待した謎解きは味気ないほど、 えっそんなので終わりなの?と拍子抜けし肩を落としたところであっけなく幕切れとなった。もとい謎を解決する探偵ピートの人物設定そのものが私には疑問である。取ってつけたように謎の日本人探偵があらわれ、唐突な事実を暴き立てられても違和感ばかりだった。探偵役はベッグフォード社のお仲間たちだけでも充分読ませるミステリーが描けたのではないか。同じく犯人像の造型も成功しているとは言い難い。犯人のどこからやってきたのか判然としないていの存在感のなさが、悪い意味で意外な人物でありかつ謎めいていると、こじつけられなくないが。謎を創造することには才能のある書き手だと思うので、他作も読んでみたいとは思う。出来ればピートコージもの以外で。