テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
個性的な組み合わせでありながらシンプルに楽しめるハード・バップ盤 ケニー・バレルとジョン・コルトレーン。これら 二人の名前を並べると何かとんでもなく特別なアルバムではないかと構えてしまう人もいるかもしれない。けれども、意外にわかりやすく、なおかつシンプルに楽しめるハード・バップな1枚だと率直に思う。それが、この『ケニーバレル&ジョン・コルトレーン(Kenny Burrell & John Coltrane)』である。1958年の録音で、当初、ニュージャズ・レーベルから発売され(New Jazz 8276)、後にプレスティッジ・レーベルから再リリースされた(Prestige 7352)。 ちょうどこの頃のジョン・コルトレーンは、ジャズ奏者として開眼し、セロニアス・モンクの元を離れてマイルスのグループへと復帰していく頃であった。初期の代表作である『ブルートレイン』(1957年9月)や『ソウルトレーン』(1958年2月)といった作品の吹き込みは、本作のそれぞれ半年前と1か月前に当たる。他方、ケニー・バレルもジャズ・ギタリストとしての地位を固めつつあり、前年にはジョン・ジェンキンス(アルト奏者)とのコラボ盤(『ジョン・ジェンキンス・ウィズ・ケニー・バレル』)も録音している。 本盤でバックを務めるのは、トミー・フラナガン(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、ジミー・コブ(ドラム)である。タイトルからして普通に考えれば、ケニー・バレル(ギター)とジョン・コルトレーン(テナー・サックス)が主役で残りがバックのサポートと写り、したがって、二人の絡みを聴こうという気になるかもしれない。確かに、バレルの出番は多いし、コルトレーンのサックスとも絡み合う箇所も多い。それぞれのファンなら、ソロを受け渡すところや二人の掛け合いについつい耳を奪われてしまう。それはそれで本盤の楽しみの一つである。けれども、このような聴き方だけがすべてではなく、他の楽しみ方もある盤だという感想も同時に筆者は抱いている。 アルバム全体にわたってどこかしら漂ってくる軽妙な感覚はどこから来るのか。それは、ケニー・バレルとトミー・フラナガンの組み合わせにあるように思う。実際、ケニー・バレルのギターの出番は多いのだが、持ち前のブルージーなプレイはやや抑え気味に見受けられる。極論を言うと、ブルージーなバレルは鳴りを潜め、全体にあわせているようにすら聴こえる。しかし、その結果、フラナガンのピアノとともに美しいメロディを奏でることに成功している(実は本作収録曲5曲中、1.と5.の2曲が彼によるものである)。もし、バレルがリズム・セクションの3人の上に“乗っかった”プレイをしたらならば、こうはならなかっただろう。なおかつ、コルトレーンのサックスとも真っ向から“対決”することもなく、全体の調和を考えた演奏をした結果がこの"控え気味なバレル"というわけだ。 実際、1.「フレイト・トレーン」でバレルが演奏に入ってくる瞬間などは、全体の様子を伺いながら演奏しようとしている姿が音の向こうに見えるようである。4.「ホワイ・ウォズ・アイ・ボーン」だけは、二人のデュオ演奏であるが、ここでも、バレルのフレージングの控え気味加減(決して音数が少ないとか、音量が低いというわけではない)が、コルトレーンの演奏をより聴き応えのあるものにしているという印象を与える。他方のコルトレーンはというと、“シーツ・オブ・サウンド”やさらに後の“モード奏法”を極めていく前の、ハード・バップ時代のコルトレーンのイメージそのままのプレイを披露している。 以上のように、緊張感あふれる個性的な対決を期待して聴くよりも、全体の調和を楽しむ姿勢で聴くことで、このアルバムのよさが一層浮き彫りになるように筆者には思われる。 [収録曲] 1. Freight Trane 2. Never Knew 3. Lyresto 4. Why Was I Born 5. Big Paul パーソネル: Kenny Burrell (g) John Coltrane (ts) Tommy Flanagan (p) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds) 録音: 1958年3月7日 【2500円以上お買い上げで送料無料】【CD】[UCCO-99072]ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン [ ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン ] 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016年02月04日 09時34分53秒
コメント(0) | コメントを書く
[ジャズ] カテゴリの最新記事
|
|