テーマ:Jazz(1967)
カテゴリ:ジャズ
ライブ演奏の解体と再構築から生まれた“動”の1枚 マイルス・デイヴィス(Miles Davis)といえば、音の革新者であった。モード奏法やエレクトリックなどジャズの音の進化を思い浮かべる人も多いだろう。その一方で、マイルスのトランペッターとしての真骨頂はリリシズムにあるという意見の人も多くいる。マイルスの演奏は、確かに時に極めて繊細で、その様子は、『カインド・オブ・ブルー』や『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』などといった有名どころの複数の作品でとくに顕著に感じ取ることができる。 だが、マイルスの演奏のすべてがそうした一側面だけで語り得るということはない。言い換えれば、“これぞマイルス”という盤を選ぶのは不可能に近く、選ぶとすれば、“○○という面でのマイルスのこの1枚”とう選び方にならざるを得ない。 さて、今回は“勢いと激しさ”という観点から、筆者として真っ先に思い浮かぶ1枚、それが本盤である。トランペットのソロ奏者としての迫力がじかに伝わってくるという意味においての、マイルスのベスト盤と評してもいいかもしれないのが、この『フォア・アンド・モア(Four & More)』であると思う。 1.「ソー・ホワット」(元は『カインド・オブ・ブルー』に収録)にせよ、2.「ウォーキン」(元は『ウォーキン』に収録)にせよ、かつてのスタジオでの録音のヴァージョンに比べると、一気にたたみかけるようなスピードに乗って演奏されている。といっても、ただただアップテンポなだけというわけではなく、モードに向かっていったマイルスが暗中模索しながら辿り着いたメンバーでこの演奏が繰り広げられている。圧巻はトニー・ウィリアムスの激しいドラミングとハービー・ハンコックのピアノの個性。ここにマイルスの勢いのあるトランペット演奏が重なることで、この高揚感は可能になったのだろうと思う。 あらためて驚くべきは、姉妹盤『マイ・ファニー・バレンタイン』との対比である。『マイ・ファニー・バレンタイン』のところでも述べた通り、『フォア・アンド・モア』と『マイ・ファニー・バレンタイン』は同じコンサート音源(1964年2月12日、リンカーン・センター、フィルハーモニック・ホール)から作られたアルバムである。同じ日、同じ時にこういう二種類のまったく異なる方向性のプレイを完璧なまでにライブでできてしまっているというのは、マイルスのミュージシャンとしての懐の深さというほかない。しかも、その二方向の異種の演奏は、意図的に編纂されて、我々が耳にするアルバムに仕上がっている。今さらながら、“ジャズでリラックス”という風に気軽にしかジャズを捉えていないリスナー(別にジャズを軽く聴く行為自体を全否定するわけではないけれど)には、ぜひ聴いて欲しい名盤。“ジャズは疲れる音楽”でもあるというのが、このマイルスの二枚から伝われば、そうした方々のジャズの聴き方、ジャズ観は変わるに違いない。 [収録曲] 1. So What 2. Walkin’ 3. Joshua=GoGo 4. Four 5. Seven Steps To Heaven 6. There Is No Greater Love=GoGo [パーソネル・録音] Miles Davis (tp) George Coleman (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds) 1964年2月12日録音。 【送料無料】フォア&モア/マイルス・デイビス[CD]【返品種別A】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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