テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
羊頭狗肉ではあるが、ハードバップのエッセンスがまったりと発揮される好盤 ハンク・モブレー(Hank Mobley)という人は、生きている間には十分に評価されず、その死後(1986年没)も正当な評価をなかなか受けなかった、不遇のジャズ・サックス奏者である。同じテナー奏者で喩えるなら、ジョン・コルトレーンのように先鋭的な演奏をするわけでもなく、かといって、スタン・ゲッツのような優しいプレイや世間受けする演奏スタイルを見せるわけでもない。別に悪意があってこのような悪口めいたことを書いているわけではないのだけれど、おまけに本盤のようなややこしいものがあると、つくべきファンもなかなかつかないということになってしまうのだろうか…。 本盤は『ザ・ジャズ・メッセージ・オブ・ハンク・モブレイVol. 1(The Jazz Message of Hank Mobley)』という。このタイトルを見れば、だれだってハンク・モブレーのリーダー作だと思うに違いない。でも、実際には、モブレーは半分(LP時代のA面の4曲)しか演奏していない。全編を通して演奏に加わっているのは、トランペットのドナルド・バード、あとドラムのケニー・クラークだけである。つまりは、何をもって“モブレーのジャズ・メッセージ”なのかよくわからない。 とまあ、そのような訳なので、アルバムの体裁としては“羊頭狗肉”と言われても仕方ないのだけれど、ハードバップのエッセンスがうまくつまった好作であることは間違いない。アルバム表題は半ば無視して、前半はハンク・モブレーとドナルド・バード中心のセッション、後半はドナルド・バードとジョン・ラ・ポータ(アルト・サックス)のセッションとして聴けばいいのだろう。 前半4曲のうち最初の2曲(1.「ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー」、2.「キャッティン」)は、これぞハードバップの到達点と言っていい演奏に仕上がっている。対して続く2曲(3.「マドレーヌ」、4.「恋に落ちたら」)はまったりとした緩やかさの中で、モブレーのサックスに加えてドナルド・バードのトランペット演奏が映える。 続く後半は、ジョン・ラ・ポータの参加で良くも悪くももう少し明るい雰囲気になっている。これら3曲はヴァリエーションに富んでいるし、ドナルド・バードも冴えているのだけれど、前半のモブレーのテナーと比較するといくぶんあっさり味な感じがする。逆に、これがある分、前半4曲でのモブレーの濃さが際立っているとも言えるのかもしれない。冒頭のような表現をしてみたものの、結局のところ、筆者自身はモブレーのこの濃さに魅せられてしまっているということを再確認させられる1枚でもある。 [収録曲] 1. There Will Never Be Another You 2. Cattin’ 3. Madeline 4. When I Fall in Love 5. Budo 6. I Married an Angel 7. The Jazz Message (Freedom for All) [パーソネル、録音] 1.-4.: Hank Mobley (ts) Donald Byrd (tp) Ronnie Ball (p) Doug Watkins (b) Kenny Clarke (ds) 1956年2月8日録音。 5.-7. Donald Byrd (tp) John La Porta (as) Horace Silver (p) Wendell Marshall (b) Kenny Clarke (ds) 1956年1月30日録音。 ザ・ジャズ・メッセージ・オブ・ハンク・モブレイ VOL.1/ハンク・モブレイ[CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年06月17日 05時47分19秒
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