テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
後期ペッパーを支えたケーブルスを迎えての復帰後第2作 麻薬中毒症によって、本来であれば絶頂期/円熟期であろう時期を完全に棒に振ったアート・ペッパー(Art Pepper)。1970年代ももう半ばというところで復帰した彼の姿は、もはや“ハンサム・ペッパー”とは程遠かった。“閃き”が素晴らしかったサックスは、ある意味重苦しくなり、風貌もまたすっかり人生の苦しみの年輪を積み重ねた姿になっていた。 そんなペッパー後期の大きな出来事の一つは、ジョージ・ケーブルスというピアニストとの出会いだったのではないだろうか。1944年NY出身のピアニストで、年齢的にはペッパーよりも20歳近く年下ということになる。アート・ペッパーとジョージ・ケーブルスが組んだ作品としては、ペッパー晩年の『ゴーイン・ホーム』や『テテ・ア・テテ』もいいのだけれど、今回取り上げるのは、カムバック後、『リヴィング・レジェンド』に続く2作目となった『ザ・トリップ(The Trip)』という盤である。 そもそもペッパー後期の評価(というよりも好き嫌い?)は激しく意見が分かれる。かくいう筆者も、実のところ、かつての軽やかに舞うペッパーの音楽は自然と体の中に入ってくる感じがするが、復帰後の作品全般については、あまりそういう感覚がしていない。その一方で、この『ザ・トリップ』にはまるという人も多いし、上のように言いつつも、筆者自身もたまに引っ張り出してきて聴く盤だったりする。そこで、今回は後期ペッパーの全体的印象論ではなく、この盤に関してどこが面白いのか、何が特徴なのかを少し立ち止まって考えてみたい。 冒頭の表題曲1.「ザ・トリップ」(2.も同じ曲の別テイク)は、妖艶でモーダルな雰囲気で幕を開ける。アルトで演じるコルトレーン、みたいな印象を持つ人もいることだろうと思う。これに続く3.「ア・ソング・フォー・リチャード」は休業前のペッパーの演奏を思わせる柔らかさと優しさを備えている。マクリーンで知られる曲の4.「スウィート・ラヴ・オブ・マイン」、、ミディアム・ブルース曲の5.「ジュニア・キャット」に続いては、6.「おもいでの夏(ザ・サマー・ノウズ)」。この演奏がまた切実感で一杯の名演で、軽妙さとは全く正反対にある重みを感じさせる。一転して、最後の7.「レッド・カー」はジャズ・ロック風である。 上記の収録内容をざっと見渡してみて、ばらばらな印象を受けるかもしれないが、意外と不思議なのは、実際に聴いてみるとそうでもないというところなのである。麻薬中毒により地に落ちたかつての花型プレーヤーのアート・ペッパーは、ジャズ界の流れから取り残された。あらためてここに収録された各曲の、各演奏のヴァラエティを見ると、失われた時間を一気に取り戻そうとしているように見える。つまるところ、一定のスタイルや志向性で統一された全体を聴く盤ではない。いろいろの要素を個々にもしくは全体で聴く盤だと言えるように思う。 その演奏を支えているピアノのジョージ・ケーブルス(さらにはドラムのエルヴィン・ジョーンズ)の存在ももちろん忘れてはならない。個人的には、4.「スウィート・ラヴ・オブ・マイン」の、さらりとしながらもボサ・ノヴァ風アレンジを食ってしまうかのようなピアノソロ(彼らしさが勝っているのは、比較的オーソドックスな5.「ジュニア・キャット」でのソロ演奏部分と比べてみるとよくわかる)がいい。 [収録曲] 1. The Trip 2. The Trip (別テイク,CD追加曲) 3. A Song For Richard 4. Sweet Love Of Mine 5. Junior Cat 6. The Summer Knows 7. Red Car [パーソネル・録音] Art Pepper (as), George Cables (p), David Williams (b), Elvin Jones (ds) 1976年9月15・16日録音。 【送料無料】 Art Pepper アートペッパー / Trip 輸入盤 【CD】 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 “ぽち”応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016年11月02日 20時42分44秒
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