テーマ:アメリカン・ロック(103)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
2枚組ではなく、2枚同時発売の地力(後編)
『ヒューマン・タッチ』を制作していたブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)は、その完成直前に新たなアイデアが浮かび、アルバム1枚分をさらに録音したという。早い話、 “ついでにもう1枚できてしまった”わけで、そのこと自体、驚異的な創作力である。そうして出来上がった内容は、2枚組(つまりは1つのアルバム作品)としてまとめるには適していなかったため、別のアルバムとして『ヒューマン・タッチ』と同時発売された。それが1992年発表の『ラッキー・タウン(Lucky Town)』であり、かつて1980年発表の『ザ・リバー』の際に見せたのと同じ爆発的な創作力が再び発揮された時だったと言えるように思う。 先に企図された『ヒューマン・タッチ』に比べると、『ラッキー・タウン』の方にはストレートなアメリカン・ロック曲が並んでいる。筆者の推すナンバーは、1.「ベター・デイズ」、5.「リープ・オブ・フェイス」、7.「リヴィング・プルーフ」。いずれもスプリングスティーン節が全開の王道アメリカン・ロック・ナンバーである。 他方、いくぶん変化球と言えそうなのは、4.「イフ・アイ・シュッド・フォール・ビハインド」、6.「ザ・ビッグ・マディ」、8.「ブック・オブ・ドリームズ」、10.「マイ・ビューティフル・リワード」。これらのうち、8.と10.はスロー・ナンバーの好曲。6.は『ゴースト・オブ・トム・ジョード』なんかにつながりそうな曲調と演奏である。あと、4.は、正直なところこのアルバムを聴いたときは特段何とも思わない曲だったが、後にE・ストリート・バンド再結成によってライヴで一気に魅力を獲得したナンバーとなった(過去記事参照)。 ちなみに本盤のコンセプトは、『ヒューマン・タッチ』が自己を中心に据えていたのに対し、この『ラッキー・タウン』は他者に向けられた曲たちだったという。発売当時は、『ヒューマン・タッチ』はあまり評価が高くなく、本盤の方が広く聴衆に受け入れられたように記憶している。四半世紀以上たった今、筆者の中では、『ヒューマン・タッチ』の方も結構よかったのではないかという評価に変わってきている。つまるところ、本盤『ラッキー・タウン』は従来のスプリングスティーンのイメージに沿っていて、『ヒューマン・タッチ』の方はそこから逸脱しようとした試みでもあったのではないだろうか。結果、両作品はどちらが優れているかというのではなく、それぞれに異なるベクトルをもって評価される作品なのだろうと思う。 [収録曲] 1. Better Days 2. Lucky Town 3. Local Hero 4. If I Should Fall Behind 5. Leap of Faith 6. The Big Muddy 7. Living Proof 8. Book of Dreams 9. Souls of the Departed 10. My Beautiful Reward 1992年リリース。 ![]() 【メール便送料無料】Bruce Springsteen / Lucky Town (輸入盤CD) (ブルース・スプリングスティーン) 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018年11月12日 19時13分29秒
コメント(0) | コメントを書く
[洋ロック・ポップス] カテゴリの最新記事
|
|