テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
安心して聴ける1960年代当時の“現代ジャズ”
ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)というトランペット奏者は、ずば抜けて何か革新的なことをやったとか、ジャズ界に激変をもたらしたとかいうわけではなかったと言っていいように思ったりする。むしろ、ビバップからモダン・ジャズへの発展の枠組みの中で、自身の演奏を工夫して披露していったタイプだったという評価が妥当なのかもしれない。無論、このように述べるのは、否定的な意味合いではなく、そういう立ち位置こそが、私たち聴き手を安心して楽しませてくれる音楽につながっていると言いたいからである。 とりわけ日本では、『静かなるケニー』が圧倒的な彼の代表盤としての地位と名声を得ている。同盤が名盤なのは確かだと思うけれど、ケニー・ドーハムが残した演奏は、あの“マイナーの境地”のようなものだけがすべてではなく、安心して聴ける好演が他にいくつもある(そして、それらはもっと聴かれてしかるべしとも思う)。カフェ・ボヘミアのライヴ演奏盤(『カフェ・ボヘミアのケニー・ドーハム』)は、個人的には別格なのだけれど、それを別にしても、この盤はぜひというものが複数存在する。そうしたものの一つが1960年のタイム盤『ジャズ・コンテンポラリー(Jazz Contemporary)』というアルバムだったりする。 何よりもまず、本盤は、“自然体”のケニー・ドーハムの演奏といった趣がいい。上で述べたように、ケニー・ドーハムは決して突飛なことを試みる奏者ではなかった。とはいえ、この盤では、表題に“コンテンポラリー”、すなわち“現代”とあるように、従来とは違ったフレーバーを出そうという意図もいくらかあったものと推察される。 本盤で注目したい点の一つは、バリトン・サックスを組み合わせたというところ。バリトン奏者のチャーリー・デイヴィスはどちらかと言うとスタンダードな演奏をしているのだけれども、ケニー・ドーハムのトランペット演奏との相性がよく、この起用は功を奏したと思わされる。もう一つは、若きピアノ奏者スティーヴ・キューンの参加である。この当時、まだ21歳だったキューンにとっては、最初に発表されたレコーディング作品となった。後々の熟練度はまだ十分にみられないものの、キューンの演奏のタイミングのよさというのも随所で感じられる。 もともとのリリースの収録曲(1.~6.)の中から、筆者が特にいいと思うところをピックアップして述べておきたい。ケニー・ドーハムのまさしく自然体のトランペットが最高にいいと思う演奏としては、1.「ア・ワルツ」と3.「イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ」を挙げたい。とりわけ、前者は、イントロのバリトン・サックスとの絡みからして、聴く側をわくわくさせてくれる。バリトン・サックスとの相性のよさという意味では、6.「ディス・ラヴ・オブ・マイン」も外せない。個人的には、トランペットのソロからバリトンのソロへの流れは最高である。先にピアノのスティーヴ・キューンに触れたが、上述の3.なんかは彼のピアノが効果を発揮している演奏の一つだと言えるように思う。 [収録曲] 1. A Waltz 2. Monk's Mood 3. In Your Own Sweet Way 4. Horn Salute 5. Tonica 6. This Love of Mine ~以下、CD所収のボーナス・トラック~ 7. Sign Off 8. A Waltz [take 5] 9. Monk's Mood [take 2] 10. This Love of Mine [take 1] 11. This Love of Mine [take 2] 12. This Love of Mine [take 3] [パーソネル、録音] Kenny Dorham (tp) Charles Davis (bs) Steve Kuhn (p) Jimmy Garrison (b: 1.~3., 8., 9.), Butch Warren (b: 1., 4.~7., 10.~12.) Buddy Enlow (ds) 1960年2月11・12日録音。 ジャズ・コンテンポラリー [ ケニー・ドーハム ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022年02月28日 11時54分38秒
コメント(0) | コメントを書く
[ジャズ] カテゴリの最新記事
|
|