海外製の簡易型放射線測定器は信頼できないと国民生活センターは発表、マスコミの中には「お上」を信頼しろと報道しているが、最も信頼されていないのが政府と東電
日本の政府や電力会社は福島第一原発の事故に伴う放射能汚染について情報を隠蔽してきた。深刻な汚染の状況はフリーランスのジャーナリスト、大学の研究者、あるいは環境保護団体の調査によって明るみに出てきたのである。つまり、この問題に関し、「国や自治体が公表するデータなどを参考に」することはできないということだ。 そうした状況の中では、多くの国民が自分たちの手で放射線量を測定したいと思うのは当然のこと。おそらく、早い段階から人気があった機種のひとつは「RADEX RD1503」だろう。ロシアのQUARTA社が製造、フランスのナノセンス社が販売している。 簡易型の放射線測定器(個人でも変える比較的安価な製品)を入手することが困難だった時期がある。政府が流通を止めているという噂もあったが実態は不明だ。ただ、外国政府から提供された製品が倉庫に死蔵されていたことは明らかにされているが。 需要の高まるにつれ、さまざまな測定器が市場で売られるようになったが、品質に問題のある製品も少なくないらしい。そこで国民生活センターが商品テストをしたというのだが、テストの信頼性はおくとして、その前段階である対象製品の選択に疑問がある。「信頼できない」という結論を導くため、恣意的に選んだのではないかとも思えるのだ。 ここでマスコミの報道内容をチェックしてみると、例えば次のようなタイトルがついている。朝日新聞:『ネット販売の放射線測定器、結果ばらつき 生活センター』東京新聞:『放射線計 精度「?」 安価な9製品 ばらつき』毎日新聞:『放射線測定器:「精度低い」 通販の10万円未満9種、誤差30%超』産経新聞:『10万円未満の放射線測定器 9種類すべてが不正確 国民生活センターテスト結果』NHK:『市販放射線測定器 誤差に注意』 この9製品とは何かということだが、朝日新聞では次のようになっている。「テストしたのは、6月下旬の価格が3万6千円~6万2千円の9商品。いずれも海外製か製造国が不明の機種で、通信販売のウェブサイトで人気商品として紹介されていたものという。」 「という」というのも変な話。国民生活センターは対象製品を公表している。「海外製か製造国が不明の機種」としているが、判明している機種は国名を明らかにしている。NHKも対象機種について、「インターネットで10万円未満で販売している9つの測定器について調べました。」とだけ伝えている。 それに対し、東京新聞、毎日新聞、産経新聞は次のように書いている。「測定器はいずれも中国企業の製品。3万~6万円前後でインターネットの通信販売サイトで購入できる。」(東京新聞)「センターは通信販売のサイトでいずれも中国製とみられる9商品を購入。」(毎日新聞)「テストしたのは中国製とみられる3万~6万円台の9種類。」(産経新聞) で、実際のところは次のようになっている。(簡体字は日本風に直した)1) AK2011(上海貝聖電子技術有限会社)2) BS2011+(上海貝聖電子技術有限会社)3) DoseRAE2 PRM-1200(華瑞科学儀器有限公司)4) DP802i(Shanghai ergonomics detecting instrument Co.,ltd)5) FJ2000(中国輻射防護研究院三輻電子儀器廠/中国製)6) JB4020(上海精博工貿公司)7) RAY2000A(濟寧科電検測儀器有限公司/中国製)8) SW83(上海朔旺儀器儀表有限公司)9) SW83a(浙江*群科技有限公司) いずれも名称からすると、中国を拠点とする会社のようだが、実態は不明だ。 考えてみると、日本政府はこうした製品が出回る環境を作り上げてきた。品質的に信頼できない製品が出回っているとするならば、信頼できる安価な製品を流通させる義務が日本政府にはある。過去を振り返ると、政府は逆のことをしてきたことも忘れてはならない。 マスコミも「簡易型放射線測定器は信頼できないキャンペーン」などする前に、政府や東電の情報隠蔽、あるいは改竄を放置し、そうした嘘を広めてきた過去を反省し、信頼できるデータを引き出す努力をするべきだ。