母の命日
今日は母の命日だ。10年以上前になくなった母だがいまだに私の中では生きている。聡明で、頭がよく、仕事を持ちながらも家族のことを思いやって、精一杯生きた母は私の理想であり目標であった。糖尿病という持病を抱えながらも、インシュリンの注射器を持ち歩きながら、晩年世界各国を訪れることを楽しみにしていた母。ヨーロッパ、アメリカ、カナダはもちろん、北欧まで足を伸ばし、いつも前向きで、何にでも興味を持ち、愚痴と噂話が無かった母。私と母の一番の思い出は、何といっても、毎週土曜日の映画行き。まだ小学生だった私にとって土曜日は色々な意味で、ばら色の1日であった。映画大好き人間だった母のおかげで、名作と言われた映画はほとんど見ている。小津、木下、成瀬、黒澤作品など、リアルタイムで見ているし、外国映画もよく見た。入院退院の繰り返しの中、いつも先生の言い付けを守り、頑張って退院にこぎつけていた母が、最後は、「今回はもう頑張れそうに無いから、家に帰してほしい。家で最期を迎えさせてほしい」と弱気。家族みんなで、あの気丈な母がこう言うのだから、もしかしたらダメかもしれないと、退院させてもらって、近所のお医者さんとも連絡を取り合いながら、母の部屋で看病と最期の時を迎えた。穏やかな最期だった。遺書には、楽しい人生だった、ありがとうの言葉。母の遺志で、インドに女子教育のための校舎を建てさせてもらい、母の名前をつけ、現地のカソリックの方のご助力で運営していると聞く。わが身を振り返って、最期の時にありがとうと言えるかどうか。いつも自問自答している。糖尿病----diabetes 注射----an injection, a shot