カテゴリ:観念重視から事実重視への転換
平成7年2月号の発見誌の記事を紹介します。三重野悌次郎さんの書かれたものです。
ちなみに私は三重野さんからも多くのことを学んだ。 三重野さんは大分県在住で生活の発見会に多大な貢献をされた方だが、すでに亡くなられている。 圧巻は、自書「森田理論という人間学」である。 一般意味論から展開される言葉(観念の世界)と事実の世界をこれほどわかりやすく説明されている本はないのではないかと思っている。いつも「事実唯真」を突き詰めて考えておられた。 「神経症は治すことはできないが、治る方法がある」というのが三重野さんの口癖であった。 三重野さんは、物事を事実に即して観察し具体的に話すことが大切であるといわれている。 我々は自分の見聞きしたことを、あるがままに見て、あるがままに話していると信じている。 だが事実は決してそうではない。 たとえば、私はいつも失敗するという人に、では最近の失敗がいつ、どのようなことであったか」と聞くとたいていすぐに思いだせない。 事実は、何日か何か月か前に一度仕事上の失敗があった。その前にもいつか失敗をしている。 ということであって、その後は仕事の失敗も家庭での失敗もない。 でも本人は「私はいつも失敗する」と信じているのである。 これは一例であるがこのようなことはよくある。 一般に「いつも」とか「みんな」とか、「絶対に」とかいうときは、ちょっと立ち止まって「果たしてそうか」と自問する必要がある。 ある人は「みんな」の名人であった。「みんなそう言っている」というのが口癖だった。 そこで誰が言ったのかと聞くと、親戚の女の人が一人言っただけで、それに自分も賛成だと、みんながいっていることになるのである。 このような具体的でない話は、本人の気持ちが入っているということだと思う。 つまり「かくあるべし」が含まれているのである。 抽象的な話は森田理論で学習する事実本位の生活からどんどん離れていく。 「かくあるべし」から事実本位の生活に転換するためには、最初から難しく考えないことだ。 まずは事実をよく観察することに徹したほうがよい。 先入観や憶測、決めつけは三重野さんの言われるように間違いの元である。 森田先生は、幽霊屋敷と聞けば真夜中に実際に確かめに行かれて裏付けを取ろうとされている。 こういう生活態度はぜひまねてみたいものである。 次によく観察した後は、それを具体的に説明する癖をつけることだ。 「まとめて言うと・・・」「要するに結論は・・・」などと途中経過を飛ばして話してはダメである。 また具体例がなく、抽象的な話だけでは聞いている人は分かりにくく、そのうちうんざりしてくる。 観念の世界から離れて、事実の世界から出発する基本は、事実確認を怠らないことと具体的に話すということである。それだけでも大きな変化のきっかけとなるものである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.05.31 20:28:21
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