カテゴリ:行動のポイント
森田先生は、神経症で苦しくて休職や辞職することを禁止しておられます。
失業する前に僕の診察を受けると、僕は決して職業を辞めさせないと言われています。 水谷君は大学受験を1年延ばすというのを撤回させた。 山野井・行方・谷口君も、みんなわずかの違いで、職を離れるところだったのである。 倉田百三さんは、強迫観念を治してから、しかる後に原稿を書こうと考えておられたのを、僕が勧めて、苦しいながら原稿を書くようにした。 後になって見れば、その時の創作がかえって出来がよかったとの事です。 神経症に陥るとイライラして仕事が手につかなくなります。 精神的にも肉体的にも苦しい。人間関係も悪化しています。 一刻も早く休職して神経症の治療を受けたいと思うのが普通だと思います。 休職や退職は一時的には確かに楽になります。しかしその反動を忘れてはなりません。 今までは症状を抱えていても、その事ばかりに関わってはいられない状況に置かれていたわけです。いくら仕事が遅くて他人に迷惑をかけていたとしても、どっぷりと症状に向き合っていることはできなかったのです。 しかし一旦休職や退職した場合、四六時中症状の治癒のことばかりに専念できます。 将来に明るい展望が見えてくるような錯覚に陥ります。 これは認識の誤りです。かえってというか、当然というか症状は悪くなります。 神経質性格は自己内省性が強いという特徴があります。 これが大きくマイナスに働いてくるのです。 常に自己嫌悪、自己否定的に働き、精神交互作用によって、悪化の一途をたどることになります。神経症の葛藤や苦しみは、自分の頭の中で苦の種を作り出して、一人で相撲を取っているようなものです。周りから見るとどうしてそんなことに苦しんでいるのか。 精神異常を起こしているとしか見えない状態です。 神経症に陥ってしまう人は、必ず何らかの強い欲望を持っています。 対人恐怖症の人でしたら、人から高く評されたい、一目置かれるような人間になりたいなどです。その反動として、非難、否定されるようなことは絶対にあってはならない。 悪口を言われ、からかわれ、無視されるようなことは絶対に許すことはできないわけです。 強力な「かくあるべし」を持って自分を監視しているわけです。 そのうち本来の自分の目的を忘れて、不安を取り去ることが唯一最大の問題にすり替わってしまったのです。本来の目的を見失って、とんでもないことを目標に再設定してしまったのです。 それからの努力はすべて成果の上がらないむなしいものになってしまいます。 そこに発生している不安は、欲望が暴走しないような役割を果たすために発生しているのです。これを精神拮抗作用といいますが、太古の昔から人間に標準装備されているものなのです。 神経症になるというのは、その不安の取り扱い方を間違っているのです。 誰でも新しい車や電化製品を買った時は、取扱説明書で研究し正しい使い方を学びます。 それと同じように、不安の特徴や役割、欲望と不安の関係を学ぶことが大切になります。 休職や退職を選ぶということは、ただ単に今の当面の苦しみから急いで逃げ出すことです。 その道は、経済的な損失のみならず、精神衛生の面から見ても、明らかな間違いと言わざるを得ません。神経症で苦しいでしょうが、衝動的に安易な道を選択しないことです。 以上はうつ病などの器質的な精神疾患で苦しんでいる人には適応されません。 精神科医の診断を仰ぎ、絶対安静、休職などが必要になります。 薬物療法に取り組むことで、問題解決に至ります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.10.12 06:20:05
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