カテゴリ:行動のポイント
緩和ケア医の大津秀一先生のお話です。
解決困難な大きな病気を抱えて、「先生どうにか治る方法はありませんか」と聞かれた場合、「大丈夫です。そのうち治ります。一緒に頑張りましょう」と嘘をつくのはいけません。 いつしか患者さんが現実と虚構のギャップで猛烈に苦しむことになるからです。 またその人に寄り添って受容するだけでは反発されることがあります。 例えば、回復不可能な相手との復縁を求めている場合などです。 もちろん最初は相談者に寄り添い傾聴することが基本です。 問題はその後です。 「結局私はどうしたらいいのですか」 「先生は何でも相談に乗ると言ったじゃないですか」と言われるような場合です。「その答えはすぐには見つけられないかもしれませんが、そのうちいつかあなた自身で見つけられるはずですよ」とアドバイスしても相手は納得してくれません。 相談者は「なんだ結局何も教えてくれないじゃないか・・・」と反発してきます。救いを求めているこの方には、求めている答えと著しく違ったのでしょう。 解決することができないような難しい問題の場合、正攻法で解決しようとすると、益々袋小路に入ることになります。 神経症もこれと同じで、正攻法で対応しようと考えているならば、思ったような効果は期待できません。 このような場合は、目標指向型アプローチを採用するとうまく作用します。 「現実的な目標を立てて、それに向けて行動していきましょう」というアプローチをとるのです。 大津先生の医療現場では、特に余命がかなり限られている方には、もはや問題解決を重視するやり方を推し進めると、その方の生活の質、生命の質を下げてしまうことになりやすいと指摘されています。 問題解決を全く無視するわけではないのですが、それよりも上位に「目標指向型アプローチ」を置いたほうがうまくいくのです。 「治ってほしいと私たちも願っています」 「その一方で、今できることを考えてみませんか」 「何をすれば一番いいと思いますか」 「したいこと、やるべきことはありますか」 「治るという希望も大切ですが、別の考え方も取り入れながら、並行してやっていきませんか」とお伝えし、その方のQOLを改善する目標を立てるのです。 結果として、問題解決を重視した人よりも長生きした人を私は何人も知っています。「目標」を立てることが、生きる希望につながるのです。 目標を持つことは、目の前の問題が解決できないというジレンマから苦悩者をすくいあげることにつながり、希望を抱くことができるようになるのです。 (傾聴力 大津秀一 大和書房 参照) この考え方は、神経症の解決策を求めてやってきた初心者への対応方法として留意したいことです。最初は傾聴、共感、受容で信頼関係を作ることが大切です。 その後ですが、「治ってほしいと私たちも願っています。それについては最大限の協力はさせていただきます」 「その一方で、今できることを考えてみませんか」 「何をすれば一番いいと思いますか」 「したいこと、やるべきことはありますか」 「治るという希望も大切ですが、それとは別の方法も並行してやっていきませんか」「2本立てでQOLの改善を図るというのは如何でしょうか」という流れに持って行くのです。 私も初心者の頃、実践課題を作ってその結果を次の集談会でお聞かせくださいと何度も言われました。 その当時は、神経症の克服と関係のないことをなぜしつこく言うのだろうと思っていました。 今考えると、神経症に正面から向き合うよりも、QOL(生活の質、生命の質)を上げることにエネルギーを投入した方が、よほど治りがよいように思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.06.03 23:51:25
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