カテゴリ:人間関係、不即不離
セイバンという有名なランドセルメーカーがあります。
昔はランドセルの色は黒か赤というのが定番でしたが、今やその色は30種類くらいあるそうです。価格は4万円から8万円くらいの幅があります。 ランドセル選びは楽しいことですが、選択肢が多すぎるというのは、時間がかかり混乱することにもなります。 そこでセイバンは一つの実験をしました。 色とりどり、価格の違うランドセルを一堂に展示して、子供ひとりで選んでもらう。親は子どもが選ぶのを別室のモニターで見てもらう。 最初に案内係が「お父さんお母さんはどんなランドセルを選ぶと思いますか」と子供に聞いてから選ばせる。 すると子供が選んだものは、ほとんど親の許容範囲に収まったという。 4歳5歳の子供ですが、親の好きそうな色を見極める能力を持っているということです。 次に、「君の大好きなランドセルを自由に選んでください」と伝える。 すると面白いことが起きる。 すぐに直観力を働かせて、これがいいと笑顔で選ぶ。 選んだものが最初の商品とは違うという結果がでたそうです。 実際には、女の子が黒や青のランドセルを選ぶ。 男の子がピンクや赤のランドセルを選択する。 これにはさすがに親が戸惑う。動揺する。 今はそれでよいかもしれないが、これから6年間という長期間使うことになる。 途中でこの色はイヤになったと気が変わることも十分考えられる。 高価なものなのでそのときに簡単に買い替えることはできない。 そうかといって我が子の選択に批判的な対応はしたくない。 このジレンマをどうするか。 1、子どもの気持ちを尊重して親は口をはさまない。その代わり後から買い替えたいといっても同意はしない。それを子どもに伝える。 2、世間の常識とは違う色のランドセルは、後からきっと後悔することになる。こういう場合、子どもはまだ正しい判断ができないのだから、親が主導権を持って、無難な色のものを選択して子どもに与える。 この問題を森田理論で考えてみました。 親がモニター室にいて、子どもに自由に選ばせるということは大変良いことだと思います。親は子どもにべったりくっついているとつい口をはさみたくなるという習性があります。 子どもも親がそばにいると無意識のうちに親に気を遣うことになります。 この実験では、全部のラインナップをすべて見せて、この中から自由に選択しなさいという設定になっています。このやり方は問題なのではなかろうか。 ランドセルには、色彩的に男の子向き、女の子向きというのがあります。 子どもがその時は正しい選択だと思っていても、数年後に後悔することはいくらでもあります。たとえば男の子でピンクのランドセルを選んだ場合、高学年になったとき違和感なく使いつづけることができるでしょうか。 この場合は、お店の人が男の子向け、女の子向けにある程度区分して別々に展示するというのはどうでしょうか。そのブースに案内するのです。 あるいは、あらかじめ親が区分けして、その中から自由に選択させるというのは如何でしょうか。 たとえば男の子ならピンク系や赤系統のものを避けて、15種類から20種くらいに絞っておく。その範囲内で子供に自由に選ばせる。 これなら子供もある程度自分の意志が尊重されたと思えます。 親もその範囲なら喜んで同意できるのではないでしょうか。 親子でよい買い物をしたと喜び合うことができます。 すべての面で自由に選択するというのは、あまり現実的ではありません。 たとえば1000万円を超えるような高級な乗用車に乗りたいと思っても、ほとんど不可能です。自分の経済力の範囲内で選択するしかありません。 スポーツでも自由に相手と戦ってもよいのですが、それは明確なルールの範囲内でのみ可能ということになります。ルールなしの競技は大変危険です。 自由に行動してもよいというのは、ほとんどの場合、ある程度の枠のなかで初めて許されるということではないでしょうか。 このことを子育てで応用しようと思えば、親や先生はあらかじめある程度のルールや範囲を設定する。その範囲では子どもたちに自由に選択し行動させる。 親はいちいち口をはさまないで、遠くから子供を暖かく見ているだけにする。 制限されたなかで自由に行動させると、窮屈なように感じますが、その方が現実的であり、実際には丸く収まることが多いように思われます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.06.03 10:37:04
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