まだ白蛇がうちに居座っている。
えさも与えてないのに、どうやって生きてるのだろう。
彼にも見えたのだから、生き霊というわけでもなさそうだ。
彼には白蛇が戻ってきたことは言わないでいる。
心配させてたくないし、これ以上関わりあいになりたくないだろうから。
私自身だって、関わりたくないけどね。
一人暮らしだったのに、帰って迎えてくれるものが居るというのも、
不思議な感じだ。
まるで自分のうちのように、「お帰り」という白蛇。
私もなぜか段々慣れてきてしまった。
思わず、「ただいま」と言ってしまう。
ペットだと思えばいいのか。
とても可愛いとは思えないけど・・・。
この頃、彼からの電話が少ない。
以前は帰ったらすぐに電話をくれたのに。
今は、仕事が忙しいとのことだけど、
白蛇のこともあって、避けられてるのかしら。
それだけではないかもしれない。
不安に感じて、こちらから電話しようにも、
彼の仕事用の携帯に電話する訳にはいかないし、
私用の携帯は持ってないのだ。
帰りは残業で遅いらしい。
今まではこんなことなかったのに。
もしかしたら、他に好きな人ができたのだろうか。
疑心暗鬼になってしまうのだ。
「男のことを考えているんだろ。」
見透かしたように、白蛇が突然に話し出す。
「彼のことを考えて何が悪いの。」
開き直ってみるが、弱気になってしまう。
「考えるだけ無駄なんだ。
信じられないなら、別れればいい。」
「そんなに簡単に割り切れないわよ。」
白蛇と話すほうが無駄だよね。
そう思いながらも、心に秘めておくと、
ますます想いが空回りするのだ。
「自分でもどうしていいかわからないのよ。」
つい弱音を吐いてしまう。
「だから余計なことは考えないようにすることだ。」
白蛇に慰められてどうする。
「あなたのせいかもしれないでしょ。」
つい、白蛇を責めてしまった。
自分のせいかもしれないけど、
そう思いたくないのだ。
「蛇がそばに居るだけで離れていくようなら、
それだけの男なのだ。」
なんか、納得してしまう。
彼からの電話を待ってるだけなんて、
哀しすぎるよね。
白蛇もまともなこと言うじゃない。
それにしても、私はなんでこう受身なのだろう。
もっと積極的にならないと、とも思うのだけど、
嫌われるのが怖くて、人の顔色を伺ってしまう。
すぐに「ごめんなさい」と言ってしまうのは、
私の悪い癖だ。
自分でも嫌になるけど、仕方ない。
意地張って謝れない人よりましか、とも思うけど。
「ごめんなさい」より、「ありがとう」と言いたい。
突然、電話のベルが鳴った。
彼かと思って、急いで受話器を取る。
「もしもし」
「・・・・・」
何も聞こえない。
でも、息遣いだけは聞こえるような・・・。
無言電話?
彼かと期待しただけに、失望も大きい。
ガチャンと思わず電話を切ってしまった。
白蛇といい、無言電話といい、
嫌なことばかり続くなあ。
肝心の彼からの電話はかかってこないし、
もう今日は待つのをやめて寝ようかしら。
睡眠不足だと、仕事中眠いんだよね。
あくびをかみ殺してると、人と目が合ったりして。
白蛇も寝たのか何も言わない。
でも、蛇は夜行性かな?
私が寝てる間に這い回られても薄気味悪い。
かといって、一緒に寝られても困るな。
出来たら最初から読んでいただけると、ありがたいです。
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