小説「アタラクシア」(金原ひとみ)を読みました。
【第5回渡辺淳一文学賞受賞作】
望んで結婚したのに、どうしてこんなに苦しいのだろう――。
最も幸せな瞬間を、夫とは別の男と過ごしている翻訳者の由依。
恋人の夫の存在を意識しながら、彼女と会い続けているシェフの瑛人。
浮気で帰らない夫に、文句ばかりの母親に、反抗的な息子に、限界まで苛立っているパティシエの英美。
妻に強く惹かれながら、何をしたら彼女が幸せになるのかずっと分からない作家の桂……。
「私はモラルから引き起こされる愛情なんて欲しくない」
「男はじたばた浮気するけど、女は息するように浮気するだろ」
「誰かに猛烈に愛されたい。殺されるくらい愛されたい」
ままならない結婚生活に救いを求めてもがく男女を、圧倒的な熱量で描き切る。
芥川賞から15年。金原ひとみの新たなる代表作、誕生。
いろいろな夫婦を一人ずつの独白で描いている。
同じ状況も立場が違うとこんなにも感じ方が違うのかと思う。
感情が分からないというサイコパス的な由依も妊娠・死産した時だけは、感情が動いていた。
あのまま無事に生まれていたら、母親としての感情が芽生えていたのかな。
不思議と思いつつ、惹きこまれる小説でした。