テーマ:DVD映画鑑賞(13978)
カテゴリ:外国映画 ら、わ行
武器商人といえば、映画では、悪役のはずなのに、この映画では、武器商人が主役です。 ねたばれありありですからね。 武器商人である主人公ユーリーの仕事ッぷりは見事なのものです。いくら主役でも、悪者なんだから、と思いつつ、コミカルで面白いシナリオにみているこちらはついつい主人公に味方して、気持ちも同調してみてしまう。インターポールのバレンタインに追われているユーリーが捕まりそうになると、はらはらし、うまく逃げ切るとやったーとつい応援してしまう。 ![]() しかし、ラストでいよいよ捕まってしまったユーリーが上からの圧力で釈放される。 ここにいたって武器商人なんて所詮大きな力に使われる子飼いに過ぎない。と監督は語る。 戦争は儲かる。武器を売りさばくことはそれ以外のどんな商売より利ざやがいい。 戦争より儲かる商売ができない限り、地球上から戦争がなくなることはないのだ。 毎度何度も書いていることだけれど、戦争に頼らずになりたたせることのできる経済システムを作り出さない限り、世界から戦争がなくなることもない。 その呪縛は国家すら、解きほぐすことができずにあえいでいるのだから。 平和を訴え、国連軍を作りながら、その裏で武器商売をする現実を、じゃあいったいどうすればいいんだろうかと、 映画を見終わった時、考えてみてほしい。 映画の冒頭でユーリーが言う、「地球上のすべての人間一人に一丁の銃を売るんだ」という言葉は、実はそれくらいになるまで世界の先進主要国はどこもみんな、平和と国連を言いながら、影で武器を売りさばいて儲け続けていることを、指摘しているわけだ。 ロシア人でありながらアメリカに亡命したユーリーは武器商人となる。タイミングよく、ソ連崩壊のチャンスに自身のロシア語とロシア国内の人脈を使ってかつてのソ連軍の武器をいち早く買い付けることに成功する。ここにいたって、なぜ彼が、ロシア人という設定だったのか納得なのだが。アメリカに住むロシア人とはなんとも皮肉なそして、絶妙な設定だ。 かくて、金持ちになった彼は雲の上の存在だと思っていた憧れの美女を妻にする。 美しい妻のために命がけで仕事をする男。 彼の現実に気づかないフリをして、画家や、女優を目指して自己実現に忙しい妻。 女の自己実現が男の命がけの仕事の上にあるという皮肉さは、なんともはや。 自分の人生を生きようとしながら、所詮夫の手のひらで踊っているに過ぎない女。 妻のために命がけで働き、あるいは妻の望みで武器商売をやめても見る。 その夫もまた、国家という大きな力の手のひらの上で踊らされているに過ぎない。 それは、正義を目指して自分の仕事に忠実に生きるインターポールのバレンタインもまた同じだ。 みんな自分の人生を必死に生きようとしながら、他者に踊らされているに過ぎない。 それでも、必死に生きているんだ。 夫の仕事の真実を知って、「やめてほしい」と願う妻が、かつてモデルとして、夫の行く戦場のあらゆるとこに貼られていた彼女のポスターは、彼女もまた、戦争の上がりでその収入を得ていたという皮肉なのだろうか。 戦争の皮肉も、個人の人生の真実の皮肉も、いろんな意味合いで描かれていて、見終わってうーんとうなりつつ、納得する映画です。 そして、普通の人が普通に見て解りやすい。 ニコラス・ケイジ。相変わらず渋い。 ![]() ロード・オブ・ウォー@映画生活 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[外国映画 ら、わ行] カテゴリの最新記事
|
|