テーマ:DVD映画鑑賞(14194)
カテゴリ:外国映画 あ行
ヤフー動画で無料配信していたので見てみました。 終戦の四年後くらいの製作なんですよ。日本が戦後の復興に必死だった頃にこんな映画作ってたんだなあとびっくりでした。 それでも、昔のものなので、今のようなすごい画面ではないのです。ほとんどのシーンはスタジオで撮っていて、戦闘シーンだけ、実際に戦場で撮影した本物を使っているのです。 そのわりに不自然でなく、うまく挿入されていて、しかも、太平洋戦争の実録のフィルムがみられる。 やはり本物は迫力があります。それに、これ本当かなあとくだらない疑いをしないで、そのまま見られるもの。 なかなか参考になります。不謹慎だけど、面白いし、興味深い。 まだ本物の戦場で戦ったことのない兵隊たちが、厳しい隊長に鍛えられていく。最初は隊長に対して反感も感じていた隊員たちが、実際の戦場での隊長の勇気ある行動や判断力を見ていくにつれ、だんだん隊長を慕うようにもなり、一人前の兵士として成長していく。 ハワイ沖の島での戦闘そして、最後は硫黄島での戦闘です。 そして、ラストはまさにあの星条旗をすり鉢山にたてるシーンを隊員たちが見ているところ、そして、さあ、まだまだ続くぞと戦場に出ていくでシーンで終わります。 そして、その後に音楽とともに、われわれは祖国のために戦うんだという内容の歌詞が流れる。 びっくり。 戦争映画といえば、テーマは「反戦」と思っていたら、この映画はなんと戦争賛歌の映画。戦うのは大変だけど、それでも、自分たちは祖国のために戦うんだとそういうテーマなんです。 作中にでてくる日本兵は黄色い兵隊と呼ばれ、いかにも、憎憎しげな演出。明らかに悪いやつという描写です。 そして、硫黄島についた兵隊は浜辺の砂を手にとって見ながら、「こんな荒れた島を何で占領するんだ?」という。 硫黄島戦の戦略的な理由なんて全く知らないまま、いわれたままに戦ったいるだけなんだなあと。 少なくとも、当時、日本軍の兵士はみんなその理由を知っていたはず。うーん。日本側ほどの切迫感が全然ないんだよね。 日本兵とアメリカ兵は戦場での意識やスタンスがぜんぜん違うんだなあと、そういうのが、よくわかります。 作中、一人の兵士が隊長にむかって、「俺の息子は兵隊になんかしないぞ。ちゃんと大学に入れてもっとまともな仕事をさせるんだ。」というシーンがあって、ラストちかくでこの兵隊は死んじゃうんだけど、その時彼がもっていた十歳の息子宛の手紙を隊長がその場で、読むんですね。これこそまさに「硫黄島からの手紙」でしょ。タイトルはもしかするとここからなのかもしれない。 で、手紙は途中までしか書いてなくて、結局彼は息子に将来何になれとかこうとしていたのかわからないまま。いかにも意味深です。 大学に行けといいたかったのか。それとも、兵隊も悪くないといいたかったのか。 けれど、大学にいかせようと考えていた彼の手紙が結論のないままというのは、彼の中で迷いが生じた。兵隊もいいんじゃないかと考え始めた。そんな含みをもってラストシーンの歌が流れる。 硫黄島戦は大変だったけど、まだまだアメリカは戦争するから、祖国のためにみんな軍隊に入って戦おうぜと、まさにそういう作りなんですね。 これって今の北朝鮮とぜんぜん変わんないジャン。明らかに国策映画なんだもの。戦場の悲惨さなんてほとんど伝わってきませんよ。 部隊のメンバーが見た、星条旗のシーンはありありと、あの写真と全く同じポーズを俳優たちがとっているのです。 『父親たちの星条旗』は、まさにこの映画の裏番組というか、アンチテーゼとしてつくられたものだったのだとわかりました。 スピルバーグは、長い間この映画に対して、思うところがあって今回初めて、星条旗の真実を描いた映画を作ることで、やっとすっきりしたんじゃないのかな。 自分の愛する映画が国策や戦争の道具に使われたことへの怒りとか、あったのかもしれないなと。
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