カテゴリ:まんが
原田梨花の文庫化第一作の『満月の夜』がかなり面白かった。だから、買ったのがこれ。 子供向けの漫画じゃなくて、レディース・コミックなので、主人公もそのほかの登場人物も大人。社会人。会社員。 ある日とつぜんの父親の死。 その途端、親のコネで入った会社はクビになり、お金持ちだったはずの父の財産はほとんどは価値のない株券になっていて、建てたばかりの家は相続税も固定資産税も払いかねて売るしかなくて、ボーイフレンドには去られ、日々の生活費にも困るような状況で、母親は主人公をほっぽりだして家を出て恋人と結婚。残された主人公は、家を売り、税金を払いアパートを借りて、バイトをはじめる。 でもとにかくトロイ。二年の事務職にもかかわらず、エクセルもワードも出来ず、税金とかそのほかの請求書の計算も合わない。コピーをとっても枚数があわない。就職もなかなか決まらず、貯金を使い崩す経済状態。 もう、読んでるとどきどきです。生活のひっ迫感とか、親が死んだ途端に実は家にはお金がなくて途端に貧乏とか、思わず身につまされて、心臓がどきどき痛かった。とにかく身につまされるんだもの。私はもう結婚してるし、親が死んでチョク困るとかはなかったけど、それでも、この先どうなるかわからない不景気の現状なので、読みながら現実が背中をすりすりと歩いていくようでこの序盤が怖かった。 要するに世間知らずのお嬢さんが親の死をきっかけに現実をしり、苦労しながら成長していく話なのではあるのですけどね。でも今の世の中、きちんと働いていても、お金は足りなくて、主人公はかなり大人になったはずなのに、話しの終盤でもやっぱり家計の収支が合わなくて、主人公は相変わらずひいひい言ってたりする。 結婚しても、さらにいろいろ苦労はあって、だんな様が守ってくれるなんてのは、一世代前までの話なんじゃない。のかな。 なかなかのイケメンの男の人とお見合いして、でも結婚にも踏み切れず、好きな人には彼女がいて結婚しちゃうし。 人を好きになるってどういうこと。 たくさんのカップルが主人公の周りで結ばれていく中で、好きなはずなんだけど、惚れてるのかどうなのかわからない見合い相手との距離がどうしてもうまく縮められなくて悩む主人公。 ぐだぐた考えずにパーッと結婚しちゃえばいいのにーと思ったんだけど。 まあいまどきの人生は長いですからね。あせっても始まらないかもしれないねえ。 主人公を助けてくれる二人の幼馴染は主人公とは正反対にすごくしっかりしているばりばりのビジネスマンとビジネスウーマンなので、やさしいなあと思っていたら、実はこの人たちもみんなかつて親に死なれて苦労したり、つらかったり、留学先の外国でお金なくて困ったり、やっぱり主人公と同じ体験をしていたんだった。 かつての自分が目の前にいるみたいだからやさしかったんだね。 ほんと身につまされます。 さらに主人公を助けてくける非情に徹しきれない優しい弁護士さんも加わって、主人公の家で四人で食べるおなべパーテイーがすごく楽しそうでおいしそうでうらやましかった。 ラストはきっちり二人が結ばれるシーンがなくて、ほのめかしたまま。たぶんちゃんとうまくいくだろうとは思うけど、最後までぐずぐずのままの二人が本当にこのあとうまくいくのか、読者としては不安この上なくて、やっぱり出来ればきっちり、二人が結婚するまでを書いてほしかったのになと思っちゃうんですけどねえ。 恋と人生に悩む大人初心者の二十代の若者たちの心の軌跡の描写がうまい。 ストーリーの設定自体は目新しいものじゃないれど、それでもぐいぐい読まされる作者の力量に拍手。 それにしたってこの二人の仲がなかなか進まないのは、この二人のせいばかりじゃない。恋人にもあえないくらい忙しくて風呂にも入れず自宅にも帰れないなんておかしいよ。主人公だって正社員として働いているのに貯金崩さないと生活できない。物語のための設定だけじゃない信憑性があるって言うか、今の世の中ってほんとにこんななんだもの。仕事が忙しすぎておちおち恋も出来なきゃ、結婚もままならないし、まして子作りどころでもないわけで、少子化なのもうなずけるってもんです。 しかも、親が死んだら、住んでる家も売り飛ばさなきゃならない今の世の中っておかしいと思う。税金高すぎだよ。 今の社会の実情もありありと物語っていて違和感なしなのがなんともいえないです。
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最終更新日
2019年05月23日 21時15分23秒
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