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話題作だというので読んでみた。というのは、いつものことなんだけど、タイトルから想像して幕末維新の話かと思っていたら、なんと、宮本武蔵の話だった。原作は吉川英二の有名な小説『宮本武蔵』。昔、映画で、連作五作くらいかけて作られていた。それを大晦日のテレビ東京のスペシャル企画で一日に一気に見た。しかし、当時みたものと、原作は同じなのに、なんだかぜんぜんちがう。
とにかく人を切るシーンがすごい。まさにそのものずばり、真剣を使っているのだから、当たり前なんだけど、切りつけるシーンの描写が本当にそのまま書かれているのだ。手を切り落とすシーン。体をばっさり斜め切りに真っ二つに切ってしまうシーン。内臓にきりこんでいくシーン。切りつけられていたがるシーン。「痛み」が、読んでいても、ダイレクトにこちらに伝わってくる。 時代劇のチャンバラなんかだと、よく剣を使ってのたちまわり。でも、切ったはずなのに、刀には血の一滴もついてないし、切られた人はわーっといって倒れるだけで、切られたようにも痛そうにも見えない。 あくまで殺陣なのだから。 いままでの漫画でも大概がそんなものだったような気がする。 しかし、この漫画はその剣によって人を切る、切られる部分の描写がすごい。とにかくいたそう。本当にナマの剣で切られるとこんななんだなと、そういう部分の描写がすごくみごと。 宮本武蔵といえば、剣の達人として有名だし、映画でも、剣の道を究めていったその人生が描かれていた。 けれど、実際には、真剣を使っての命を賭けての殺し合いだったというのは、なかなかショック。 自分の人生をかけて剣の道を究め、自分の修行のために相手を殺すことになっているのに、そのことに対して、武蔵は特に気にしている様子もない。 剣の道を究めるために人殺しをし続けている物語なのだ。 そして、人を殺しても、使命手配されるわけでもないし、殺人罪で捕まるわけでもない。剣道の竹刀のようなものを使っての剣の修行なんていうのは、現代の話であって、この当時は真剣で戦うのが当たり前の時代だったようだ。ちょっとびっくり、っていうか、かなりびっくり。 何しろ時代は関が原の合戦前後から始まっている。国を支配するトップが先頭を切って殺し合いをしているのだから、そこいらの人間が剣で人を切ってもつかまらないし、お咎めなしなのも、当たり前かも。 でも、テレビの時代劇のチャンバラや、新撰組なんかをテーマにした漫画なんかみて、それほど大変なことだなんて思ってなかったけど、剣の道、真剣を使っての勝負ってこんなことだったんだあと、とにかくオドロキ。その描写がすごく克明に書かれている。剣がうまい、イコール、かっこいいなんてとんでもないことだ。 現代人はやーっぱり平和ボケしてる。 こんな風に平和で人を殺せばきっちり殺人罪として、つかまるという治安のいい社会を当たり前のことだと思い込んでいたけど、そんなこと全然ない。 そういう安心して暮らせる社会になったのなんて本当につい最近のことなのだ。 時代物をみると、その当時の社会の価値観がよくわかる。 いやはや痛い漫画である。 バガボンド(26) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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