カテゴリ:まんが
ごく普通の主婦鮎川早紀は、ある日夫秀行から離婚したいと告げられる。けれど、いきなりの離婚では困るだろうから、離婚するのは、三年後の今日この日。それまでに自分の力で生きていけるように仕事を見つけて、準備をしておくことを約束することになる。 ぐうたらで、家事が嫌い。毎日の食事はスーパーの惣菜。片付けもろくすっぽしないで昼寝ばかり。夫との関係も冷めていたまさに倦怠期。 けれど早紀は、夫からの離婚宣言で、仕事探しを始め、家事をしっかりやって秀行の離婚の決意を変えさせようと努力する日々。 働き始めた早紀のために秀行も家事を手伝い始め、夫婦関係、家族関係は、修復され、良くなったかに見えた。 それぞれに相手のよいところを見直し、離婚はやめて、これからもやっていこう、と、それぞれが思っていたはずなのに、ちょっとした行き違いから、結局秀行によって離婚届は出されてしまう。本来なら、離婚しても、同じ相手とならすぐに再婚できるのだが、それを知らない二人は、半年待たないと再婚できないと思い込む。そうこうしているうちに、秀行は昔の知り合いの女性と結婚せざるを得なくなってしまう。 早紀もまた、彼女の天性の優しさにほれた裕福な年下の青年実業家にほれられて、結婚する。 前半の、早紀を中心とするごく普通の家庭の暮らしや、主婦の生活描写のリアルさが見事で、パートで働く大変さ、PTA、町内会などのこまごまとした主婦の雑仕事、子育ての日常的な大変さなどがよく描かれていて、共感しながら、読んでいた。二人はそれぞれに努力してお互いの今まで気づかなかったよいところに気づいたり、ぐうたらだった早紀が働いたり、PTA会長をしたりして、自立し始め、それぞれに見直していて、これは、離婚しないで終るだろうなと思っていたら、意外にばっさりと離婚になってしまった。しかも、そのあと、それぞれが別の人間と再婚。 それぞれの努力によって家族を築いていく物語ではなかったらしい。 三年たってもやはり、家事をきちんとやらない全てに大雑把でいい加減な早紀の性格がどうしても我慢できなかった夫秀行。 離婚されたくなくて、必死に家事をこなし、働いていた早紀はけれど、離婚が決まったあと、結局それまで働いていた医院にたいして、一言の断りもなく、姿をくらましてしまう。三年間努力したにもかかわらず、結局早紀の本質は変わっていない。家を出た後、拾ってもらった、義理の姉の霧子の家でハウスキーパーとして働く早紀は相変わらず、家事がいい加減でぐうたらなままだ。 夫の方は、仕方なく結婚した相手のあまりにもきちんとした家事ぶりに最初はなれることができず、つかれてしまうのだが、結局そのまま結婚生活は続く。なんだかんだいいながら、結局、彼は最初ののぞみどおり、家事をきちんとやってくれる妻と結婚したのだ。早紀の人としての優しさに気づいたけれど、やはり、家のことをきちんとしてくれる妻を彼は望んでいたのだろう。 けれど、早紀とのことがあって、ある程度相手の大変さを思いやるやさしさをみにつけた秀行は新しい妻に対して以前よりずっと思いやり深く接することも出来るようになっていた。 そして、早紀のほうは、お金持ちなので、家事はやらなくてもいいから、心を和ませてくれる女性を望んでいた実業家と再婚する。早紀のぐうたらぶりは結局3年間の努力によっても変わらなかった。 相手のためにそして自分のために努力するのは大切なことだけれど、結局二人の人間が長い間一緒に暮らしていくには、相手のために頑張れるかよりも、相手の欠点をどこまで許せるかなのだろうか。 この結末を読むとどうやらそういうテーマに落ち着いてしまうようだ。 自分が望む部分を満たしてくれる相手を見つけること。そのうえで、それ以外の部分は許容していくこと。 結婚相手はやはりそれなりに、そういう自分の望む条件をよくよく考えた上選ぶべきものなんだろうと思う。 夫が妻に望むのは、家事や家のことをきちんとやってくれる相手なのか、家に帰ったときくつろがせてくれる相手なのか。 妻が夫に望むものも、収入なのか、自分を理解してくれるやさしさなのか。 それにしても、前半のリアルな庶民の生活ぶりを描いていた物語が、後半から、殺人のからんだ、サスペンスストーリーに変化してしまって、読者としては、なんで?という意外な展開だった。 作者は当初は離婚せずに、仲直りしてハッピーエンドのつもりが人気がでて話を引き伸ばしているうちに、話がどんどん予定外の方向に進んで行ってしまったのだろうか。それとも、最初からこの結末が用意されていたのだろうか。 物語としては、面白かったけれど、美人でもないし、頭も良くない、だらけた普通の主婦に二人もイケメンのいい男が寄ってきたり、最後はものすごい金持ち男と再婚しちゃうシンデレラストーリーになってしまった。でも、現実の私たちにそんなことある分けない。離婚された後は、少ない収入にきゅうきゅうしながら、一人で孤独に生きていかなければならないし、子供といっしょだとしても、一人での子育ては大変だし、教育費はとほうもなくかかる。 だから、やっぱり、夫婦仲良く暮らせるように自分なりに自分のすべきことはきちんとして暮らしていくべきだよなあと思う。 それにしても、最初は悪役で登場する性格の悪い女性たちが、物語の進むにつれて、その生い立ちや裏側の部分の描写によって、なぜそんな性格になったのか、こんな行動をとるのか、その人物描写が非常に深くて見事だった。悪役が悪役だけで終らずにもそれぞれのいろんな人物の人生が描かれていたのがすばらしかった。 何年か前にテレビドラマ化されていたけれど、そちらの方は微妙にストーリーが違っていたようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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