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2009年03月15日
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森信三「幻の講話」第二巻より

 坂村真民さんは、五十三才の時、宇和島の旅館に森信三先生を訪ねた。
念願詩誌『詩国』の発刊は、真民さんは、その出会いによって啓示を受け、決意を固めたものだが、その出合いを次のように語っている。
「先生にお会いしなかったら、お言葉に感動しても、それが骨髄にまで達せず、月刊詩誌『詩国』も途中で挫折したであろうし、今日まで続くことはなかったであろう。『腹がすわる』ということは、なかなか難しいものである。先生は旅館の部屋で、お一人夕食をとっておられた。初めての対面なので、わるい時に来たなと思ったが、いろいろ話を聞いてくださり、最後に何か困っていることがありますかと言われるので、わたしが朝鮮にいる時、一番お世話になった人の消息を知りたいと話したとたん、食事をやめて、鞄を取り寄せハガキを出し、それを書かれて、これを帰りしなポストに入れなさい、この方ならきっと捜してくださいますと、おっしゃったのである。
このことが、わたしの腹をつくってくれたのであった。先生が偉大な哲学者、教育者であるだけだったら、腹はすわらなかったであろう。先生は偉大な実践者でもあった。実践とは、大地に足をつけて、ゆるぎない人をいう。そのことを丹田に打ち込んでくださった。『詩国』が、一回も休まずに今まで続いてきたのは、先生のおかげであり、あれから病気をしなくなり、『詩国』の読者も全国的に増えていった」と。

   主人貧しくも  坂村真民

  主人貧しくも 鶯来鳴き 春の戸ひらく

  主人貧しくも 月照り ひかり堂に満つ

  主人貧しくも 石笛吹けば 天女舞う

  主人貧しくも タンポポ咲いて 種子四方に飛ぶ



   ひとりひそかに  坂村真民

  深海の真珠のように

  ひとり ひそかに

  じぶんを つくってゆこう



   ねがい   坂村真民

  ただ 一つ 花を 咲かせ そして 終る

  この 一年草の 一途さに 触れて 生きよう



  花は開けど   坂村真民

 花はひらけど わが眼ひらかず わが心ひらかず

 罪業の深さよ 視力を失おうとする

 眼に映りくる 花の清さよ



 念ずれば花ひらく  坂村真民

 念ずれば 花開く 

苦しいとき 母がいつも口にしていた このことばを 

わたしも いつのころからか となえるようになった

そうしてそのたびに わたしの花が ふしぎと

ひとつ ひとつ ひらいて いった






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最終更新日  2009年03月15日 18時12分28秒
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